アジアの湿地の「保全」と「賢明な利用」に向けた取り組みを求める2008年
「ハノイコール」


<前文略>  アジア湿地シンポジウム2008に参加した20か国187人の参加者は、アジアにおける最大の課題は、国際レベル、地域レベル、国家レベルおよび地元レベルにおける湿地の「保全」と「賢明な利用」を支える、より実効的で効率的なガバナンスの構造とメカニズムの構築が必要であると認識した。同様に、調整され計画された方法によって、発展への取り組みと生物多様性保全の目標とを結びつけることの必要性を認識した。参加者はとくに、気候変動の影響によって湿地生態系に生じている脅威に対して、懸念を表明し、またとくに開発関連のセクターにおいて、湿地の価値に関するCEPA(コミュニケーション、教育、普及啓発)をさらに強化する必要性を認識した。
アジア湿地シンポジウム2008は、上記の課題に取組むために実施されるべき以下の10項目の緊急かつ当面の行動を明らかにし、政策決定者に、これらの優先順位を上げるよう求め、地元レベル、国家レベル、地域レベルで、これらの行動の実施を支援するために必要な資源が利用可能となるように保障することを求める。

劣化した海洋、沿岸、淡水および人工の湿地を回復させ、当該湿地がひきつづき生物多様性を保全し、食糧と水の供給、水の浄化、気候と洪水のコントロール、沿岸域の保全、レクリエーションの機会など、人間の健康と福祉に貢献する多くの生態系サービスをひきつづき提供できるようにすること。
統合的な病害虫の管理、有機農業、廃棄物処理制度、効率的な水管理などの環境にやさしい農業方法の適用を通じて、湿地における水産養殖を含む農水産業のベストプラクティスを開発し、実施すること。
湿地の価値評価、脆弱性評価、流域管理のような湿地の評価、監視および管理のための手段と手法の開発と実施にあたっては、統合的で、学際的なアプローチを採用すること。
湿地資源の保全と賢明な利用に積極的に貢献する、伝統的文化の慣行と先住民の知識についての情報を文書化し、公開すること。また可能な場合は、それらの慣行や知識を湿地の管理に組み込むこと。
地元の人々の生活と湿地の保護を実現するため、開発の目標と生物多様性保全を結びつける統合的なアプローチを明確にすること。ミレニアム開発目標および貧困削減戦略をとおしての湿地の保全と賢明な利用に向けた取り組みは、その一つのアプローチであろう。
気候変動の湿地への影響に関する研究をさらに進め、それらの研究成果を広く利用できるようにすること。湿地で実施される実際的で有効な適応・緩和措置に関する研究に優先順位をあたえること。たとえば沿岸湿地に関連し、海水面の上昇や台風、サイクロンのような自然災害に対応できる措置を明確化すること。気候変動への適応および?または緩和の戦略を、湿地の計画作成と意思決定の主流に組み込むこと。
地域的、国家的および地元レベルでの湿地の保全と賢明な利用を支える、機構的な構造とメカニズムを設立し、再評価し、そして強化すること。このような構造やメカニズムには、分権化された構造、公的・私的部門のパートナーシップ、および権利にもとづくアプローチが含まれる。
すべての利害関係者による湿地の保全と賢明な利用に関する意思決定プロセスへの、有意義で実効的な参加を可能にする、既存の法政策的枠組みを強化すること。これに関して、女性のような社会の片隅に追いやられたグループ、貧困層のなかでももっとも脆弱なグループの関与を強化させることに、優先的な注意がはらわれるべきである。
共有されている湿地系と生物種に関する協力を強化し、かつ平和を促進するための手段として、国境を越える湿地協定を策定し、または姉妹湿地やフライウェーネットーワークを整備すること。
10 アジアにおける湿地に関する研究者、計画策定者、意思決定者のあいだで、湿地の保全と賢明な利用の手段とアプローチに関する知見の実効的な移転と共有を可能にするメカニズムを確立すること。


 アジア湿地シンポジウム2008は、次のアジア湿地シンポジウムの開催までに、上記10項目の取り組み実行の評価をし、シンポジウムの場での討議に役立つ報告書としてまとめられることを提案する。
アジア湿地シンポジウム2008はベトナム国天然資源環境省が主催し、日本国環境省、国際自然保護連合(IUCN)、ラムサールセンター(RCJ)が協力して、2008年6月22日〜25日、ハノイで開催された。
アジア湿地シンポジウム2008の主催者は、「ハノイコール」を、2008年10月28日〜11月4日に韓国チャンウォン市で開催されるラムサール条約COP10に報告するため、ベトナム国政府の支援を求める。
2008年6月25日 ベトナム社会主義共和国ハノイ市において


TOPへ