ラムサール通信
2005年3月1日発行 第92号


● 「アジア湿地シンポジウム2005」報告会●
――「チリカ声明」「TSUNAMI勧告」をCOP9へ――

 ラムサールセンターにとって、アジアにとって最大の湿地イベント「アジア湿地シンポジウム2005(AWS2005)」が、2月6日〜9日、インド・チリカ湖(ブバネスワル市)で、32カ国400人が参加して開催されました。
 2001年マレーシア・ペナンから3年、ウガンダのラムサール条約締約国会議(COP9)への貢献をめざすAWS2005は、締約国こそ増えたものの、貧困と政治的不安定をかかえたアジアの湿地保全が思うように進まぬなかで、「湿地の保全と貧困の克服をめざす新たなアプローチ」をメーンテーマに、5つのテクニカルセッション、特別セッション「TSUNAMIと沿岸湿地管理」、ポスターセッション、サイドイベントで計80の研究・論文発表、議論がくりひろげられました。
 予定されたラムサール条約アジア地域会合のジョイント開催(9日〜12日)が直前になって延期されながらも、インド、日本、ベトナム、ミャンマー、ネパール、アフガニスタン、イランなどの政府代表、AWS2005を特色づけた南アジア各国からの参加者に、国際機関、研究者、NGO、地域住民、女性、学生など、いつもの顔、珍しい、新しい顔のにぎやかな国際シンポジウムでした。入試とぶつかり大学関係の会員の参加は難しい状況でしたが、若いボランティア中心にラムサールセンターから27人が参加。またチリカ湖との国際交流イベントのため、サロマ湖の子どもたちと漁業組合関係者8人も特別参加して会議を盛りあげてくれました。
 AWS2005は会議の成果を「チリカ声明」「TSUNAMI勧告」として採択、大成功で幕を閉じました。この内容と成果を報告、情報を共有するため、下記のとおり報告会を行います。11月のウガンダCOP9に向けて、今後の貢献、方針を協議したいと思います。ご参加ください。


第62回<ワイズユース>ワークショップ
「アジア湿地シンポジウム2005」報告会
日時: 2005年3月12日(土)午後2時〜5時
会場: 法政大学市ヶ谷キャンパス・ボアソナードタワー24階 人間環境学部会議室 *JR飯田橋駅・市ヶ谷駅から徒歩10分/キャンパス内の高いタワー校舎です。地図は http://www.hosei.ac.jp/gaiyo/campusmap/ichigaya2.html

プログラム:
1. AWS2005全体報告 中村玲子(RCJ事務局長)
2. 「チリカ声明」「TSUNAMI勧告」の意義と今後の活用 岩間 徹(RCJ会長)、武者孝幸(RCJ副会長)
3. AWS2005の成果と課題−ISCを代表して− ビシュヌ・バンダリ(IGES)
4. AWS2005に共催して 佐々木美貴(日本国際湿地保全連合(WIJ))
5. チリカ・タレノイ・サロマ湖の子ども湿地交流会報告 赤瀬悠甫(FAN事務局長)
6. 参加者からの報告と討議
参加費(資料代): 2000円(会員1000円)
報告会後は、慰労をかねた懇親会です。*場所は会場近くで予定



●AWS2005への寄付金70万円を突破しました●

 前回につづき、新たに風間善浩、大亀哲郎、高田雅之さんから寄付金のご協力をいただきました。ありがとうございます。これによって寄付金合計は70万7600円となりました。開催地の地理的問題による旅費の増大、特別セッションの追加など開催費が膨らんでいる状況で、このような寄付が大きな励みになりました。心からお礼申しあげます。当初目標100万は達成困難(?)のようですが、寄付金受付は3月末で終了します。


●「アジア湿地ウィーク」報告●
 毎年恒例のアジア湿地ウィーク<子どもと湿地>キャンペーン(世界湿地の日2月2日〜8日)には、佐潟と歩む赤塚の会(新潟)、鴨池観察館友の会(石川)、谷津干潟自然観察センター(千葉)、中海水鳥国際交流基金財団(鳥取)、漫湖自然環境保全連絡協議会(沖縄)が参加され、日本各地で湿地観察会や環境教育ゲームなど、さまざまなイベントが開催されました。
 またインド・チリカ湖では、AWS2005と並行して2月6〜7日に、チリカ湖(インド)、サロマ湖(日本)、タレノイ湖(タイ)の3つのラグーンの子ども湿地交流会が開催されました。サロマ湖から外村拓海(12)くん、千谷冬磨(12)くんが、タレノイ湖からチュリポーン・イントラクサ(16)さんが参加し、野鳥やイルカなどの生き物観察、エビ、カニ漁の見学、そして沿岸の漁村の訪問をしました。夜は、チリカ湖の子どもたち40人が参加し、チリカ湖に関するビデオの鑑賞と、外村くん、千谷くんがサロマ湖を自作のビデオを使って紹介しました。質問が飛び交い、活発な意見交換が行われ、アジアの3つの湖を結ぶ画期的な国際交流は大成功でした。
 さらに子どもたちを中心とした湿地交流の輪が広がっていくことを期待しています。


●バングラデシュポーシュ「沿岸湿地マネジメント」ワークショップ報告●

 1月12日、バングラデシュのコックスバザールで、バングラデシュポーシュ主催のワークショップ「住民参加型の持続可能な沿岸湿地マネジメント」が開催され、農民、漁民、地主、教師、学生、老人、商人、地域のNGO、幼エビ採集に駆り出される子どもなど約60人が参加しました。
 ポーシュは平成15年度から地球環境基金の助成のもと、同地で、失われたマングローブ林の再生と環境教育と貧困克服のための新しい住民参加型の総合社会開発プロジェクトに取り組んでおり、プロジェクトの評価と来年度に向けた課題を討議する目的で行われました。
 ラムサールセンターからは武者孝幸、野中由美子さんが参加。プロジェクトの進行状況や現在抱えている問題、成果がポーシュのスタッフから報告され、漁民ら地元住民との討論が2時間にわたりくりひろげられました。

「今回ワークショップに参加して、現場に行って、実際に見ることはとても大切だということを実感しました。バングラデシュの人々の暮らしは湿地と密接に関わっていて、乾季と雨季で異なる田畑の利用はまさにワイズユースだと思いました。ワークショップでは、当事者である幼エビを違法に採集する子どもたちが参加していたことに驚きました。また、貧困とは何かと考えさせられました。バングラデシュは湿地の国だと実感させられました。雨季にぜひまた行きたいです」(フェリス女学院大学2年 野中由美子)


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