ラムサール通信
2004年6月22日発行 第86号


●ラムサールセンター第14回総会(2004年5月30日)報告●

アジア湿地シンポジウム(2005年2月、インド・ブバネシュワル)を成功させ
アジア湿地ネットワーク/イニシアティブを構築し
ラムサール条約COP9(2005年11月、ウガンダ)にアジアからの貢献を

 ラムサールセンター(RCJ)第14回総会が、2004年5月30日(日)、東京・渋谷のフォーラム8で、岩間(会長)、安藤(副会長)大亀(監事)、中村玲(事務局長)、武者、亀山、築地、宮崎、小松、新井、村上の会員11人ほかが出席して開催されました。
 RCJ活動は、3年ごとに開催されるラムサール条約締約国会議(COP)を目標とした、3年間の中期計画を軸に進められていますが、2003年4月〜2004年3月の昨年度は、その中期計画第5期(2002〜2005年)第2年にあたり、アジア湿地シンポジウム「AWS2001(マレーシア・ペナン)」で採択された「ペナン声明」の具体的な実施を中心課題に、アジアと国内各地でさまざまな事業、活動が展開されました。総会では1年間をふりかえり、問題点を検証し、課題を整理して、今年度の新たな活動方針を次のように決定しました。

<新年度(2004年4月〜2005年5月)活動方針の概要>
 中期計画第5期(2002〜2005年)は、第1年、第2年とも計画どおりに進み、新年度は、これらの成果の最終とりまとめ作業として、
(1) アジアで展開中の2つの主体事業「アジア湿地イニシアティブ(AWI)」と「アジア湿地ウィーク:子どもと湿地(AWW)」がめざしてきた方向性、「アジアによる、アジアのためのパートナーシップ」を発展させて、「アジア湿地ネットワーク」の構築をめざし、
(2) そのことを含めた、アジアの湿地保全と賢明な利用のためのレビューとペナン声明の検証、そしてアジアの課題を明らかにする、「アジア湿地シンポジウム/AWS2005(2005年2月、インド・ブバネシュワル)」を成功させる。
(3) その成果をもって「COP9(2005年11月、ウガンダ)」にアジアからの貢献をめざす。
(4) 国内活動においては、ひきつづき登録湿地の拡大と普及啓発を中心に調査、研究、情報提供などのRCJの基本活動を継続する。
 なお、事務局次長の武者孝幸さんが新たに副会長に就任しました。
以下、当日の議論をふまえて承認された総会の報告を行います。別紙活動報告も参照。

2003年度(2003年4月〜2004年3月)の活動・事業報告
T 国内における基本活動
 RCJ活動の基本は国内で、ラムサール条約の普及啓発、調査研究、登録湿地の拡大をめざして例年どおり進めましたが、海外、国際プログラムが連続したため、ワイズユース・ワークショップは2回開催だけとなった。情報と研究なしに会の発展はなし、と反省。しかし湿地を訪ね、地 元NGOと共催するフィールド版は2回(有明海、中海・宍道湖)実施できました。
最大の成果は、メーリングリストの機能化とホームページの充実。いずれも英語版を連動させ、アジアメンバーにも発信。維持、運営には多大な労力が必要ですが、築地さんはじめ事務局の若手スタッフとFAネットワークの大学生ボランティアの協力体制がそれを支えました。

1)ワイズユース・ワークショップの開催
 6月と3月の2回だけの開催でした。テーマを最新の話題提供と焦眉の課題に焦点をあてて、もっと回数を増やす努力が必要です。
2)ワイズユース・ワークショップのフィールド版の開催
 有明海干潟・六角川フィールド調査(5月、参加会員16人の大イベント)と中海・宍道湖(12月)の2回開催。中海・宍道湖は登録へ向けてのサポートとして効果的でした。
3)地域ワークショップへの協力
 厚岸湖・別寒辺牛湿原(6月)、琵琶湖(9月)、福島潟(10月)、宍道湖(11月、12月)、中海(12月)、青森・仏沼(2月)と7回の会議共催、講師派遣でした。今後も登録へ向けて活発になりそうです。要請にはできるだけ応えたいです。
4)各種湿地情報の収集と公開
 上記2)、3)、ラグーン会議後の道東フィールドツアーのほか、静狩湿原などの情報を収集。事務局では収集した湿地写真のデジタル化を進行中で、一部をホームページで公開しました。
5)関係団体との協力推進
 JICAの海外研修プログラムへの講師派遣が3回、韓国釜山市への湿地研修やマニラでの湖沼関係会議への専門家派遣、中国からの視察団受け入れなど、この分野の協力要請は年々拡大しています。会員のボランティアをお願いします。
6)報告書の発行、普及啓発ツールの製作など
 ラグーン会議報告書(英語版)とマングローブシンポ報告書(日・英版)を発行。アジア湿地ウィーク・子どもと湿地キャンペーン用のシールとTシャツ、RCJ湿地タオルを製作し、配布、頒布。これらはホームページにも掲載して販売。また報告書類は、「AWS2001報告書」とともに、池袋・ ジュンク堂書店に常備、販売しています。
7)ラムサール通信の発行とメーリングリスト、ホームページの運営
 ラムサール通信82号〜85号の4号を発行。約350人、組織に送付。また新たに会員向けのメーリングリスト(英語版・日本語版)が、会員の平井朗さんの協力でスタート。とくに11カ国21人にまたがるアジア会員とのコミュニケーション、情報共有が実現し、AWIなどRCJの海外事業は飛躍的に前進しました。この双方向、同時多数コミュニケーション(英語版)の確立は、今後の「アジア湿地ネットワーク」の前提条件として高く評価されます。
 ホームページは、築地さんを中心にボランティアスタッフの協力で日・英ともアップデート、リニューアル回数が改善。英語サイトを日常運営する日本のNGOの少ないなか、貴重な実績です。
8)事務局体制の整備
 前年度から課題だった人材育成、若返りが芽を出しはじめました。FAネットワークの子どもと湿地キャンペーンへの協力など、大学生ボランティアの事務局サポート体制が強力になりました。今後は、人材育成プログラムとして方針に組み入れていく必要があるでしょう。

U 国内の主体事業
1)「ラムサール湿地の賢明な利用―ラグーン湿地に注目して」の開催
 7月23〜25日、ラムサール条約釧路会議10周年記念事業として釧路市で開催。釧路国際ウェットランドセンター、北海道河川防災研究センターなどと共催し、RCJが事務局を担当。インド・チリカ湖、タイ・ソンクラ湖など13カ国のラグーン湿地から110人が参加。会議後、サロマ湖までスタディツアー。アジアのRCJメンバーが道東の湿地管理、漁業生産をつぶさに視察でき、有意義なシンポ、ツアーでした。日本語・英語併記の報告書をただちに発行しました。
 この交流がきっかけとなって、サロマ、チリカ、ソンクラのアジアの3大ラグーン湿地交流ネットワークが具体化。管理技術、経験の移転、相互支援という湿地をめぐる国際交流モデルになりそうです(7月にソンクラ関係者がサロマ湖を再視察予定)。
 ラグーン同様、次は農業や水田、魚類、水生植物、森林、集水域、山岳湿地、サンゴ礁、人工湿地、淡水資源、伝統文化、外来種移入…などの課題をめじろ押しです。

V 海外における主体事業
各種基金の助成、支援を受けて継続中の3つのRCJプロジェクトが、アジア各地で事業を展開。次のように充実した内容でした。

1)「アジア湿地イニシアティブ(AWI)の構築」/日本経団連自然保護基金、積水化学工業助成事業
 AWS2001ペナン声明の実施を目標に、2002年度スタートした2年目は、アジア各国の湿地専門家で構成するAWI国際委員会を3回(7月釧路、10月ブルネイ、1月タイ)、その具体的活動の成果となる地域ワークショップを2回(7月ラグーン会議、10月マングローブシンポジウム)開催。2004年1月タイ・ハジャイ国際委員会で、2005年2月インド・ブバネシュワル開催をめざす、「AWS2005国際運営委員会」を発足させました。
 アジアの湿地をめぐる現状分析、情報交換、課題の整理、問題解決へ向けてのグッドプラクティス、技術と経験の移転、国際交流などについて討議を深め、チリカ湖とサロマ湖の経験交流を先進事例とする、アジアの新たなパートナーシップ/ネットワークの構築と、AWSの定期的開催をめざす方向性が明確にされました。

2)「アジア湿地ウィーク・子どもと湿地」キャンペーン/地球環境基金助成事業
 この活動も2年目。キャンペーンは日本とアジアの各地にさらに拡大しました。
@日・中・韓3国子ども湿地交流inプサン
 プロジェクトチームAWW委員会の中心事業として、昨年の谷津干潟につづき、日・中・韓3カ国の子どもたちによる湿地交流を、WI中国とウェットランドコリアの協力で、2004年1月16〜17日、韓国釜山市とウーポ湿地で開催。日本からは鶴居小学校(北海道)、谷津南小(習志野市)、志津小(滋賀県・草津市)、とよみ小(沖縄・豊見城市)の生徒と先生が、中国からは10人、韓国からは60人が参加。3国の湿地教育者ネットワーク構想が提起されるなど、交流の輪はさらに広がりました。平井有希子さんとFAネットワークの大学生が活躍しました。
計画どおり大成功でしたが、かねてから問題の開催日設定(この時期が中国の春節と重なること)と、参加する子どもの対象年齢は、次回の中国開催までに再検討が必要です。またキャンペーンツールについても、より効果的な工夫、改善が。

Aタレノイ湿地(タイ)のラムサール条約登録5周年記念国際事業
 2004年1月30日〜2月2日、ソンクラ湖上流にあるラムサール湿地のタレノイで、登録5周年記念のAWW/WWDイベントが大々的に開催され、RCJはタイ政府、WIタイ、地元NGOなどと共催しました。日本とアジアのRCJメンバー14人が参加。
 これまでアジアの国の政府(とNGO)が、自国の湿地保全活動に、国境を越えて共催、協力を呼びかけ、これほど大がかりに取り組んだ例はなく、RCJがめざす「アジアの湿地パートナーシップ」が実現しつつあるという意味で、意義ある、エポック的イベントでした。これをモデルに、アジアのこの流れを拡大していくことが期待されます。

Bアジア各国各地域のAWWイベント
 このほかにインド、バングラデシュ、マレーシアなど海外で6カ所、漫湖、霧多布湿原など国内14カ所で、協賛イベントが行なわれ、キャンペーンは大きな広がりをみせました。
3)東南アジアのマングローブ林の保全と賢明な利用シンポジウム(ブルネイ)/日本経団連自保護基金・株式会社リコー助成事業
2000年度からはじまった「ブルネイにおける原生マングローブ林の保全および湿地と生物多様性に関するパブリックアウェアネス」(プロジェクトリーダー樫尾昌秀さん)の第4年のまとめ事業として、国際マングローブシンポジウムを首都バンダルスリブガワンで、ブルネイ森林局、IGES(日本)と共催。セリロン島マングローブ林の保全管理計画の策定に、参加した15カ国80人のマングローブ、湿地専門家が検討を加え、勧告しました。
 ラムサール条約事務局からアジア地域担当のレイ・ガンチャンさんが参加。ブルネイ政府に条約加入を促しました。IGESのビシュヌ・バンダリさんの協力で、3カ月後に報告書(英語版)を発行。
この事業のもう一つの成果は、経団連、リコーという日本の経済界との新たなパートナーシップの構築です。企業のCSR(社会的責務)が前進する現在、今後さらにこれを積み上げていかなければなりません。

4)AWS2001報告書(改訂版)の発行とペナン声明の普及
 AWS2001の報告書はCD版とともにすでに発行されましたが、いくつかの印刷ミスがあって、改訂版を発行しました。ホームページなどで紹介、研究機関や図書館などでの利用をお願いします。

5)各種会議や活動への協力
 韓国釜山市のナクトンガン(洛東江)湾岸湿地パーク計画に関するアドバイザー協力(6月、釜山)、ILECの湖沼流域管理プロジェクト(GEF事業)アジア地域ワークショップ(9月、マニラ)に協力、日米水パートナーシップ「中国流域管理共同研究」(アジ研ほか)などに協力しました。
 この種の協力要請はますます増えています。会員のボンランティアが必要です。

W 海外NGOなどへの支援活動
1)「インド・デリー市(ヤムナ川)の水質モニタリング調査と子どもと学校を対象にした環境アウェアネス」インド環境協会/地球環境基金助成事業
 滋賀大学の環境教育グループ(川嶋宗継教授ほか)と共同で研修プログラムを実施。FAネットワークの岩崎慎平さんが参加しました。
 アジア各地の都市化の進行とともに深刻な環境問題となりつつある「飲料水」をめぐる、注目のプロジェクトです。調査、アウェアネス、子ども、学校をキーワードに、滋賀大の技術、経験移転でしっかりした事業となっています。
2)「湿地保全と賢明な利用のための住民参加マネージメント組織づくりと総合地域社会開発プロジェクト」バングラデシュ・ポーシュ/地球環境基金助成事業
 「住民参加による沿岸湿地のマネジメント」ワークショップ(2月)に講師として平井朗さん、FAネットワークの新井雄喜さんと和気尚美さんが参加。住民の参加と組織化にもとづくマングローブ植林などの環境保全事業と、社会開発をバランスさせた意欲的な取り組みになっています。
 このほかにも、アジアの多くの団体から支援、協力要請が寄せられています。とくに海外NGOの地球環境基金への助成申請には日本側代理人が必要で、RCJ事務局だけでは対応しきれなくなっています。今後、会員の代理人引き受けを積極的にお願いします。

2004年度の活動方針・事業計画
 RCJの活動はAWS2001(ペナン)以降、アジアからの要請と積極的な参加によって、アジアの課題の共有、協働関係がますます拡大しています。これは、RCJ設立の経緯からすれば当然の帰結。組織が健全、着実に発展してきたともいえます。RCJがアジアから現在、そして今後に期待されている背景には、次のような状況が考えられます。
アジア諸国のラムサール条約加入は大きく前進。湿地の重要性認識は政府、地方行政、NGO、研究者レベルに(特定地域では市民レベルまで)ある程度普及し、いまでは基礎的な普及啓発、情報提供から一歩進んで、湿地がかかえている、より具体的な問題解決への取り組みが求められる段階になっています。
アジアの大多数は開発途上国で、その多くは依然として貧困にあえいでいます。人口爆発はやまず、都市化の波はますます激しくなっています。したがって、湿地への圧力はさらに増し、湿地の劣化、破壊、生物多様性の消失は拡大、問題解決の糸口は混迷するばかりです。
アジアの経済危機がこの悪循環に拍車をかけ、政府の環境問題、とりわけ湿地問題への取り組みは停滞。国際機関、先進国政府、国際NGOの支援の取り組みも一部では縮小傾向。活発化しかかった各国のNGO運動は停滞を余儀なくされています。
こうした現状、問題解決に、ラムサール条約は必ずしも特効薬ではありません。むしろ限界が明らかになりつつある、ともいえます。条約の性質上、やむをえないことです。したがって問題解決は、自力再生しかありません。しかし、貧困と湿地圧力が因果関係のアジアの途上国に、自力解決、回復、再生を期待するのは絵に描いた餅です。
チリカ湖はそうしたアジアの湿地の代表でした(州政府予算は確保されていましたが)。その解決をサポートしたのは、日本の先進事例(サロマ湖の管理、経験)でした。そして、それをつないだのはRCJとアジアの仲間でした。政府、地方自治体、NGO、漁業組合、資金の助成基金などのパートナーシップが、モントルーレコードからのダウンを実現したのです。これこそ、アジアの湿地マネジメントのグッドプラクティスです。
アジア湿地局(AWB)の解散とウェットランドインターナショナル(WI)の組織整備の遅れは、こうしたアジア問題解決へのアプローチを停滞させてしまいました。RCJの「アジア湿地イニシアティブ」は、こうした時代背景、地域状況を反映して、アジアのあらゆるレベルの湿地関係者の期待をになっている、といっても過言ではないのです。

 以上、したがってRCJの今年度の活動方針、事業計画(ひいては今後の展望)は、こうした認識にもとづいて、これまで進めてきた方針、計画を発展させ、第5期中期計画3年目のとりまとめを行うことになります。つまり、活動の重点は「アジア湿地イニシアティブ(AWI)の具体化」、「アジア湿地シンポジウム(AWS)の成功」、「アジア湿地ネットワークの構築」へということになります。そして、これらの成果をとおして、「COP9(2005年11月、ウガンダ)」にアジアからの貢献を提言しなければなりません。
 もちろんRCJの基本は国内活動ですが、これまでどおり国内における普及啓発、調査研究、とりわけ登録湿地拡大への取り組みを重視しながら、アジアのこれらの課題とバランスをとって、期待に応え、着実に展開していかなければなりません。
 以下、今年度の主な活動、事業計画の概要は次のようになります。

<国内活動>
RCJ通信の発行/メーリングリスト、ホームページの運営
ワイズユース・ワークショップの開催/フィールド・ワークショップの開催/調査、研究
資料、報告書類の刊行、頒布/普及啓発ツールの開発、製作、配布
地域会議、活動への協力(登録湿地候補を中心に)/関係団体(活動)への協力
海外団体(個人)への助成代理など各種サポート/同、視察などの受け入れ、調整
支援活動や事務局活動をとおしての若い人材の育成
その他

<海外の支援協力事業>
「インド・デリー市(ヤムナ川)の水質モニタリング調査と子どもと学校を対象にした環境アウェアネス」/インド環境協会 *地球環境基金250万円(内定)
「湿地保全と賢明な利用のための住民参加マネージメント組織づくりと総合地域社会開発プロジェクト」/バングラデシュ・ポーシュ *地球環境基金300万円(内定)
日米水パートナーシップ「中国流域管理共同研究」(6月、北京〜麗江・ラシハイ湿地)
国際ピートランド会議(7月、中国蘭州〜成都)
ソンクラ湖(タイ湖周辺自治体、NGO)のサロマ湖視察と交流(7月、北海道)
AWS作業部会(8月、インド)
JICA/ILEC水環境を主体とする環境教育研修(10月、滋賀県)
インド環境協会水質モニタリング研修(11月、デリー)
IUCN世界自然保護フォーラム(11月、バンコク)
*3年に1回の世界最大の環境NGOコングレス。3000人規模。RCJは公開フォーラムに展示ブースを出展します。参加、ホテル予約は事務局へお問合わせください。
AWI委員会・AWS作業部会(11月、バンコク)
*上記IUCNコングレスと併行して開催します。
バングラデシュ・ポーシュのプロジェクトモニタリング(11月、コックスバザール)
その他



●第59回<ワイズユース>ワークショップ・フィールド版●
「琵琶湖と北部水源の秘境湿地ツアー」のお知らせ


 7月24日〜25日、ワイズユースワークショップ・フィールド版を琵琶湖とその北部、山門(やまかど)水源の森で開催します。
 琵琶湖はご存知のとおり淀川水系に位置する日本最大最古の淡水湖。その立地と固有の生態系は、水運、漁業、水源、観光など多様な形で人々の暮らしを支え、独自の水文化を育んできました。しかし高度経済成長の波の中で琵琶湖とその集水域は大きく様変わりし、さまざまな問題が生じています。
 初日に県立博物館で琵琶湖の概要を学び、湖岸を半周しながら琵琶湖をとりまく現状を視察し、北岸の景勝地、菅浦の国民宿舎泊。翌日は、琵琶湖に注ぐ大浦川の水源に位置する高層湿原「山門湿原」を訪ね、地元住民と自然保護団体の連携による保護活動を見学。その後、琵琶湖のヨシ原の原風景が残る湖北町の琵琶湖水鳥・湿地センターを訪ね、普及啓発のあり方について交流します。
 このワークショップは、同地在住の会員、村上悟さんの協力を得て企画されました。琵琶湖の生態系、機能、価値、人々の利用について学べる盛りだくさんの内容になっています。ふるってご参加ください。

日 時: 2004年7月24日(土)-25日(日)
場 所: 琵琶湖周辺(北部を中心に)
宿 泊: 国民宿舎つづらお荘 滋賀県伊香郡西浅井町菅浦580
Tel:0749-89-0350
プログラム(予定):
7月24日(土) 12:00 草津駅(東海道線)集合
13:00-16:00 琵琶湖博物館見学
16:00-18:30 琵琶湖東岸北上、内湖見学
18:00 国民宿舎「つづらお荘」着、夕食
20:00-21:00 山門湿原についてブリーフィング
7月25日(日) 9:00-10:30 山門水源の森・山門湿原ハイキング
10:30-12:30 琵琶湖水鳥湿地センター見学
12:30-13:30 昼食
13:50 JR河毛駅で解散
費 用: 約2万円(宿泊費1泊2食付、車両レンタル料、資料代など)
*現地までは各自の手配。
申し込み: 参加希望者は7月5日(月)までにラムサールセンター事務局まで。定員15人で締め切ります。お申し込みはお早めに。



●第58回<ワイズユース>ワークショップ●
新しい法律「外来生物法」と日本の自然生態系管理について


 第58回<ワイズユース>ワークショップが5月30日(日)、東京・渋谷のフォーラム8で開催されました。国会で成立したばかりの外来生物法「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」についての勉強会で、担当された環境省野生生物課長の名執芳博さんに詳しく解説してもらいました。同法は、特定の外来生物を規制、防除を行なうことで生態系と人間、農林水産業への被害を防止することを自的に、これまで野放しにされてきた生態系攪乱要因の野生生物を積極的に排除しようという「画期的」な法律。各地の湿地でもマングース、ブラックバス、ミドリガメ、セイタカアワダチソウなどがさまざまな問題を引き起こしているだけに RCJでも重大な関心をよせており、当日は熱心な質疑討論が行なわれました。
 ラムサール研究会(滋賀)の村上悟さんからは、ブラックバス対策として施行されている「琵琶湖ルール」とその取り組みによる変化についての先進的事例を、この分野の第一人者小原秀雄先生からはいくつかの問題点の指摘をしていただきました。
 会員は、岩間、安藤、中村玲、武者、大亀、亀山、小松、宮崎、大塚、中村有、薮並、新井、築地さんが参加しました。


●東京バードフェスティバルに出展●

 5月22日〜23日に、東京港野鳥公園で日本野鳥の会主催の「東京バードフェスティバル2004」が開催されました。4000人近い人が訪れ、観察会、コンサートなど大変な盛り上がりを見せました。ラムサールセンターも展示ブースを出し、書籍、グッズなどの販売、ポスター展示、ラムサール条約の解説、普及啓発を行いました。事務局とボランティア述8人が奮闘。2000部用意したチラシ配布の効果もあって、新たな会員を獲得することもできました。久々の野鳥の会の
イベントでしたが、さすがの集客力でした。


●第2回「山門水源の森」生態系保全シンポジウム報告●

 5月8日〜9日、琵琶湖北部の滋賀県西浅井町で「山門水源の森」生態系保全シンポジウムが開催されました。主催は山門水源の森を次の世代へ引き継ぐ会と西浅井町。1日目は観察会、2日目は会員の村上悟さんが「ラムサール条約からみた山門湿原の価値」について講演しました。ラムサールセンターから、新井雄喜さんが参加。詳細は近々ホームページで紹介します。
「地元のお母さんたち手作りのおにぎりが最高でした。山門地区で収穫された「渡りの風」と呼ばれるコシヒカリだそうです。どんな湿原かって・・・自分の眼と足で確かめてください。すばらしい湿地です」(新井談)


●アジア湿地ウィーク<日本・中国・韓国>3国子ども湿地交流●
第1回打合せ報告

 2002年度から3年計画で進めてきた「アジア湿地ウィーク<日本・中国・韓国>3国子ども湿地交流(地球環境基金助成事業)は、初年度の谷津干潟、2年目の韓国・釜山、につづいて今年は中国で行なう予定で準備を進めていますが、6月12日(土)に、その第1回目の打合せが北京のWI中国(陳克林代表)の事務所で行なわれ次のように決まりました。中村玲、武者、平井有、宮崎、岡本、中村真、築地さんが出席しました。

日 時: 2004年12月23日-27日
場 所: 上海の北部、江蘇省塩城市郊外の大豊(ダーフェン)
ラムサール登録地
参 加: 中国・韓国・日本の子どもたちと先生、その他関係者

 大豊は、長江下流の沖積平野の湿地で、ツルとシフゾウで有名なところです。シフゾウ(四不像)は顔がウマ、体はロバ、ひづめはウシ、角はシカという偶蹄目の哺乳類。野生個体群は絶滅し、ここだけにイントロダクションされている絶滅危惧種。そんな珍しい動物が見られるところとして知られています。詳細は6月14日〜15日に同地を訪問した中村真子(東京農業大生)さんのレポートをホームページで後日紹介します。最終年度のイベント、みんなで盛り上げていきましょう。


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