ラムサール通信
2004年2月27日発行 第84号


●第57回<ワイズユース>ワークショップを開催します●

 2004年第1回目のワークショップを下記のとおり開催します。2003年後半から今年2月にかけて、ラムサールセンターの日本および海外での重要な活動が続きました。小規模NGOにとって、活動を並行することはたいへんですが、各地の会員やボランティアの協力で、無事、達成することができました。
 今回のワークショップは、それらの活動に主体的に参加した会員や学生ボランティアからの報告が中心です。ご覧のとおり、多彩で充実した内容です。日本に限らずアジア地域も含め、自然保護活動とくにNGO活動の停滞、低迷する現状にあって、着実に成果をあげていると自負しています。これをみなさんと共有し、新年度へ向けての方向性も展望したいと思います。都内での開催は久しぶりです。ふるってご参加ください。
 終了後は恒例の懇親会です。この終了後プログラムのみの参加も歓迎します。


第57回<ワイズユース>ワークショップ
「ラムサールセンターのアウェアネス活動報告」


時:2004年3月20日(土)13:00-16:30
所:東京・渋谷「フォーラム8」 11階 1103号室
渋谷区道玄坂2-10-7 新大宗ビル1号館/電話03-3780-0008
(渋谷駅から道玄坂を上って中腹左側。ヤマハ楽器の右に入り口)
プログラム:
1. 国際シンポジウム「東南アジアのマングローブの保全と賢明な利用」
(2003年10月6〜8日。於ブルネイ・バンダーセリベガワン)・・・ 中村玲子ほか
2. ワークショップ「ヤムナ川の水質モニタリング調査と子どもと学校を対象にした環境アウェアネス」(2004年1月12〜14日 於インド・デリー)に参加して・・・・・・岩崎慎平
釧路国際ウェットランドセンター(KIWC)と湿地修復ワークショップを共催。
3. アジア湿地ウィーク:各地で活動活発に行なわれる(2004年1〜2月 韓国、タイ、インドなど)
-日本・中国・韓国3国子ども湿地交流イン釜山(2004年1月16〜18日 韓国)
・・・・・・・・・・・平井有希子・阪上絹恵ほか
-タレノイ湿地(タイ)ラムサール条約登録5周年記念行事(2004年1月30日〜2月2日タイ)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中村玲子ほか
4. 日本のラムサール条約登録湿地倍増計画をめぐる各地の動き
福島潟/宍道湖・中海/仏沼  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・安藤元一ほか
5. ワークショップ「住民参加による沿岸湿地のマネジメント」(2004年2月14日 於バングラデシュ・コックスバザール)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・平井朗・新井雄喜・和気尚美
6. アジア湿地イニシアティブ委員会(1月30日 タイ・ハジャイ)報告「アジア湿地シンポジウム2005開催へ向けていよいよ始動」・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 岩間徹
7. 2004年度事業準備と各種助成金申請状況について。
17:00〜 懇親会(場所未定)



「国際シンポジウム:東南アジアのマングローブの保全と賢明な利用」報告●
2003年10月6〜8日 ブルネイ・バンダーセリベガワン


 このシンポジウムは、ラムサールセンターが、ブルネイ政府森林局、ブルネイ大学と共同で2000年から行なってきた「ブルネイにおける原生マングローブ林の保全および湿地と生物多様性に関するパブリックアウェアネス」事業(日本経団連自然保護基金、リコー支援)が最終段階に入り、同国のブルネイ湾岸に位置する原生マングローブ林「セリロン森林レクリエーションパーク」の保全管理計画案がまとまったことを受けて、国際的専門家によるその管理計画案の検討、評価、勧告を受けることを目的に開催されました。同時に、2002年度から開始した「アジア湿地イニシアティブの構築」事業(日本経団連自然保護基金支援)で活動の目標としているアジアの湿地保全の優先課題をめぐる地域ワークショップとしても位置づけられていました。
 開催地のブルネイはもとより、バングラデシュ、カンボジア、インド、インドネシア、日本、マレーシア、ミャンマー、ネパール、フィリピン、シンガポール、タイ、タイワン、ベトナム、スイスの15か国・地域から政府、研究者、NGOら80人、ラムサール条約事務局(スイス)からはアジア地域アドバイザーのレイ・ガンチャンさんも駆けつけ、アジアに共通の課題であるマングローブ林保全をめぐって熱い議論が展開されました。スポンサー代表として潟潟Rー社会環境室、河原恵美さんが出席し、開会式でのあいさつを行ないました。
 ブルネイ・セリロン島のマングローブ林は、長い間人為のおよばない原生状態に保たれてきたため、世界的にもめずらしいフタバヒルギを優先種とする極相林状態を呈しています。上記シンポジウムの第1日は、このセリロン島マングローブ林へのスタディツアーにあてられ、またシンポジウム後のオプショナルツアーとして、セリロン島の集水域に位置する原生状態の熱帯雨林「ウルテンボロン国立公園」見学エコツアーも行なわれました。すばらしい熱帯性の森林が残っているのにもかかわらず、その存在がほとんど知られていないブルネイの自然生態系のありのままの姿を多くの湿地専門家に知ってもらい、国際ネットワークの中に確実に位置づけるという意義を果たすことができました。
 ラムサールセンター会員の参加は、樫尾昌秀、辻井達一、中村玲子、武者孝幸、築地珠子、米澤文、アマド・トレンティーノ、ビシュヌ・バンダリ、D・P・ダス、サンサニ・チョーウ、アセ・サヤカ、スンダリ・ラマクリシュナ、マショー・マンソー、ニョマン・スリヤディプトラの14人でした。


「中海・宍道湖とラムサール条約講演会」(2003年12月6〜7日)報告●
ラムサールセンター/日本野鳥の会鳥取県支部/米子水鳥公園友の会共催

 第56回<ワイズユース>ワークショップ・フィールド版として、鳥取県米子市のふれあいセンターで、地元のNGOとの共催で開催しました。環境省山陰地区自然保護事務所、鳥取県ほか、地域のマスコミ各社が後援し、約100人が参加しました。
 6日午後の会合では、東アジアガンカモネットワーク、国土交通省出雲河川事務所、美しい中海を守る住民会議など地元団体から報告。全国のラムサール条約登録湿地について事務局長の中村玲子さんが概説。最後にラムサール湿地の先輩格である新潟県の佐潟水鳥・湿地センターの佐藤安男さんによる、地域の人々と協働で湿地の賢明な利用の実現に向けて努力することの重要性と課題についての講演が行なわれました。同じ日本海に面し、飛来する野鳥の種類、周辺の土地利用形態、気候条件など共通点の多い佐潟と中海について、意味のある情報交換になりました。
 翌7日は、米子水鳥公園の神谷要さん、日本野鳥の会鳥取県支部長の土居克男さんたちの案内で、中海・宍道湖を駆け足で一周するスタディツアーを行ない、日本第2位の大きさのラグーンの悠々たる景観を満喫しました。会員の参加は、山口県八代からの弘中、末松、東京からの中村、武者、築地、林聡、そして地元の土居の7人でした。
 なお、宍道湖・中海のラムサール条約登録については、11月1日に松江市で開かれたラムサール条約学習会(宍道湖・中海汽水湖研究所主催)に中村玲子さんが、12月13日には松江市で「汽水湖の賢明な利用とラムサール条約講演会」(自治労島根県本部主催)に副会長の安藤元一さん(東京農大助教授)が講師として招かれました。1か月間に1つの湿地をめぐってラムサール条約を考えようとする3つもの会合が開かれるのは、過去にも例がありません。条約登録へ向けて地元の熱の高まりを感じます。


インド・デリー市ヤムナ川の水質モニタリング調査と環境アウェアネスワークショップ●
インド環境協会主催/滋賀大学環境教育湖沼実習センター、ラムサールセンター協力


 ヤムナ川は、デリー、アグラ、マトゥラなどの都市を貫流してガンジス川に合流する全長14キロの大河で、北部インドのライフラインともいえる川です。しかし、流域市民の家庭から出る未処理の生活排水などによって汚染され、とくにデリー市内を流れる20キロ区間の汚染がはなはだしく、ゴミがあふれ、黒く濁り、悪臭を放っています。
 インド環境協会(会長デッシュ・バンドゥ、RCJ会員)では、2003年度から地球環境基金の支援を得て、デリー市内の学校の生徒と先生を対象にした事業「インド・デリー市の水質モニタリング調査と子どもと地域住民への環境アウェアネス活動」を開始しました。地域の人々に汚染の実態をアウェアネスし、水質浄化の取り組みへの主体的参加を促そうというものです。ラムサールセンターは地球環境基金の日本側代理人を務め、途上国の都市の人口集中がもたらす典型的なこの環境問題への取り組み支援し、途上国の水環境教育に関して多くの経験をもつ滋賀大学教育学部の協力を仲介をするなど、技術協力を行なっています。
 2004年1月12〜14日、この活動の一環として、デリーで、「ヤムナ川の水質モニタリング調査と子どもと学校を対象にした環境アウェアネス」ワークショップが開催されました。滋賀大学教育学部教授の川嶋宗継さん(RCJ会員)と遠藤修一さんが講師として招かれ、千葉大学3年の岩崎慎平さん(FAネットワーク、RCJボランティア)、宮下えりこさん(日本国際協力センター関西支所)も参加しました。
 ヤムナ川の汚染は想像以上で、4000万人いるといわれるデリー周辺の人口、すなわちステークホルダーにアウェアネスがいきわたるのは容易なことではないが「インド環境協会のスタッフはしっかりしており、参加した地元の教員たちが大変熱心で、これからもプロジェクトは順調に動くと思います」(川嶋宗継さん)との評価でした。


アジア湿地ウィーク2004
●「日本・中国・韓国3か国子ども湿地交流イン釜山」大成功●
ラムサールセンター主催
ウェットランド・コリア、ウェットランドインターナショナル中国共催

 2004年1月16〜18日、韓国の釜山市およびウーポ湿地(ラムサール登録湿地)を舞台に、「アジア湿地ウィーク2004:子どもと湿地」のメーン行事として、国際子ども湿地交流が開かれました。昨年の谷津干潟での第1回目を受けた、日中韓3国湿地交流事業の第2弾です。中国からは、ウェットランドインターナショナル中国(代表チェン・ケリン、RCJ会員)のコーディネートで、子どもと先生、湿地保護区の管理官など10人、日本からは北海道の鶴居小学校、千葉県習志野市の谷津南小学校、滋賀県草津市の志津小学校、沖縄県豊見城市とよみ小学校から先生と生徒、あわせて10人が代表として参加しました。
 韓国側のカウンターパートは、ウェットランド・コリア(代表ギジェ・ジュー、RCJ会員)で、子どもと先生の湿地保護活動や環境教育に関する発表会、ポスター展覧会、湿地見学ツアー、地元の小学校の生徒や先生、NGOとの交流会など、盛りだくさんのイベントで迎えてくれました。子どもと湿地キャンペーンは、予想以上の成果をあげ、大変な盛り上がりでした。
 なお、この韓国でのアジア湿地ウィークのイベント実行にあたっては、準備段階から、大学生を中心とした自然保護ボランティアネットワーク「FAネットワーク」の協力を得ました。韓国でのイベント当日も、阪上絹恵さん(江戸川大)、村上友和さん(東京農大)、土屋史さん(千葉大)、赤瀬悠甫さん(横浜国大)の4人のボランティアが、参加者の送り迎えや連絡、通訳、世話係、記録、撮影など、さまざまな面でプロジェクトリーダーの平井有希子さん(RCJボランティア)をアシストし、大活躍でした。
 インターネットが普及したとはいえ、言語の違う国どうしのコミュニケーションの難しさに加え、日中韓の子どもたちの休みや試験の日程が食い違うなど、3か国国際交流の実現にはさまざまな困難がともないます。結果として、盛りだくさんのプログラムを2泊3日で決行するという忙しい日程になりましたが、事故もなく成功させることができたのは、韓国側のボランティアスタッフとして奮闘したソウル大学、釜山大学の学生とともに、中国、日本のボランティアのみなさんの力が大きかったことを記しておきます。
 上記以外に参加した会員は副会長の安藤元一さん、中村玲子さん、宮崎佑子さんでした。


アジア湿地ウィーク・世界湿地の日協賛
●「タレノイ湖ラムサール条約登録5周年記念事業」●
ウェットランドインターナショナル・タイ、タイ政府自然資源・環境政策・計画室主催
ラムサールセンター共催

 アジア湿地ウィーク2004関連の行事としては、2004年1月30日〜2月2日、タイの第1号ラムサール条約登録湿地タレノイ湖で、ラムサール条約登録5周年記念行事とのジョイントで、子ども湿地キャンプや湿地セミナー、地元住民やNGOと共同の湿地イベントがおこなわれました。
 タレノイ湖はアジア有数の汽水湖ソンクラ湖水系に属し、周辺では漁業が盛んです。イベントには、ウェットランドインターナショナル日本代表の辻井達一さん(RCJ会員)、日本最大の汽水湖サロマ湖から前川公彦さん(サロマ湖養殖漁業共同組合)、インド最大の汽水湖チリカ湖からA・パトナイクさん(チリカ開発公社代表、RCJ会員)が講師に招かれ、ソンクラ湖周辺の自治体はじめ小中学校の生徒や先生、地元住民など延べ1000人が参加する盛大なものでした。参加した会員は岩間徹(会長)、辻井達一、中村玲子、武者孝幸、築地珠子、アジア会員のアマド・トレンティーノ、ビシュヌ・バンダリ、サンサニ・チョーウ、アセ・サヤカ、スンダリ・ラマクリシュナ、A・パトナイク、サノワ・ホセイン、シェサルマー・M・Rの13人のみなさんでした。日本からはほかに、サロマ湖で漁業を営む高橋康之さん、船木邦雄さん、RCJボランティアの吉開みなさんが参加しました。


アジア湿地ウィーク2004協賛
●「ワークショップ・住民参加による沿岸湿地のマネジメント」●
バングラデシュ・ポーシュ主催/ラムサールセンター協力

 2004年2月14日には、バングラデシュ南部のコックスバザールで、バングラデシュ・ポーシュ(代表サノワ・ホセイン、RCJ会員)主催の地域ワークショップ「住民参加による沿岸湿地のマネジメント」(アジア湿地ウィーク協賛)が開催され、平井朗さん(ビデオジャーナリスト、RCJ会員)が講師に招かれ、FAネットワークの新井雄喜さん(早稲大)、和気尚美さん(東洋大)がRCJボランティアとして参加しました。このワークショップは、2003年度から開始された「湿地保全と賢明な利用のための住民参加マネジメント組織づくりと総合地域開発プロジェクト」(地球環境基金支援事業)の一環として行なわれたものです。

***
アジア湿地ウィーク2004をめぐっては、ほかにも内外でさまざまな行事が行なわれました。
詳細は、まもなくホームページに掲載します。お楽しみに。


「アジア湿地シンポジウム2005」いよいよ始動●
ウガンダCOP9へのアジアからの貢献を


 2004年1月30日、第6回RCJアジア湿地イニシアティブ委員会がタイのハジャイで開催され、ウガンダCOP9(2005年)に向けて、アジアから何が貢献できるのか、何を提起すべきかをめぐって、RCJアジアメンバーによる議論が行なわれ、「アジア湿地シンポジウム2005」の概要が固まりました。2005年1月〜2月、インドのオリッサ州ブバネスワルおよびチリカ湖で開催する計画です。実現に向け、国際運営委員会が組織され、いよいよAWSはスタートしました。詳しくは次号でお知らせします。


■ラムサールセンターの新しい出版物紹介   
●アジア湿地シンポジウム2001報告書
 2001年8月にマレーシア・ペナンで開催された「アジア湿地シンポジウム2001」の報告書です。すでに、CD版は公刊されていますが、
ようやく書籍版が完成しました。1. 湿地の保全と管理のグッドプラクティス、2. コミュニケーション、アウェアネス、トレーニング、教育、3. 湿地の生物多様性、4. 湿地保全におけるパートナーシップ戦略、5. 湿地に関する政策や法律、6. 原住民とステークホルダーを含むローカルコミュニティの権限強化とキャパシティ・ビルディング、7. 気候変動、の7パートに分かれ、計115本の論文が収録されています。
発行:PENERBIT UNIVERSITI SAINS MALAYSIA
体裁:B5版/1116ページ 定価:3,000円(送料込み)
●「ラムサール湿地の賢明な利用−ラグーン湿地に注目して」報告書
 2003年7月23−25日に、釧路市で開催されたラグーンワークショップの報告書です。「ラグーン(潟湖・汽水湖)」に焦点をあてた初の国際ワークショップに13カ国、110名の参加者が集まりました。アジア各国のラグーンに関する論文が26本収録されています。
発行・編集:ラムサールセンター
体裁:A4版/136ページ 定価:1,000円(送料込み)
●マングローブシンポジウム報告書
 2003年10月6−8日に、ブルネイで開催されたマングローブシンポジウムの報告書です。1.マングローブ林の現状、課題、2.環境教育、の2冊セットになっています。ブルネイやタイ、インドネシア、マレーシア、台湾などアジア各国・地域のマングローブ林の現状が紹介されています。
発行:ラムサールセンター、地球環境戦略研究機関(IGES)
体裁:1. A4版/266ページ 2. A4版/146ページ
定価:2,000円(2冊セット、送料込み)


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