ラムサール通信
2003年7月2日発行 第82号


ラムサールセンター第13期総会(2003年6月1日)報告●

第5期中期計画の2大柱
「アジア湿地イニシアティブ」「アジア湿地週間」順調に発進。
副会長4人体制に。組織基盤の強化めざす。

 2003年6月1日、東京・渋谷のフォーラム8で、第13期総会が開かれ、会長の岩間徹さんはじめ安藤、石橋、磯崎、大村、岡本、亀山、苑原、大亀、中村玲、林、藤倉、宮崎、山崎、米澤の15名の会員が参加しました。今期は前回第12期総会で承認された第5期活動地域計画の第1年度にあたり、2002年11月のラムサールCOP8(スペイン・バレンシア)への積極的参加という節目の活動を行ったほか、「アジア湿地イニシアティブ」「アジア湿地週間」の2つの新しい活動をスタートさせました。総会では2002年度の事業報告についで、以下の活動方針が承認されました。会計報告、予算報告についても別紙のとおり承認されました。
 なお、例年のように総会にさきがけてワイズユースワークショップ(第55回)が行われ、アジア湿地週間キャンペーンの行事として行われた谷津干潟での日中韓子ども湿地交流と、インドのチリカ湖周辺での行事の記録ビデオが上映され、5月17〜18日、長崎県有明海と六角川で行われたフィールドワークショップの報告がありました。

T.2002年度の活動・事業報告
 本年度(2002年4月〜2003年3月)は、昨年度総会で基本方針が承認された中期計画第5期(2002年4月〜2005年3月)の1年目(初年度)にあたり、中期計画第4期(1999年4月〜2002年3月)の中心的活動だった「アジア湿地シンポジウム2001」(2001年8月、マレーシア・ペナン)で採択された「ペナン声明」を具体化し、2002年11月開催のラムサール条約締約国会議(COP8、バレンシア)へどのように貢献するかを中心課題・目標として、次のような計画(項目)で進められました。
1. 国内基本活動 
1) ワイズユース・ワークショップ開催
本年度は5回開催。初めての試みとして、東京農大安藤研究室、FAネットワークと共催のワークショップを実行。
2) 地域各種ワークショップ開催・協力
釧路国際ウェットランドセンター(KIWC)と湿地修復ワークショップを共催。
3) 各種湿地情報の収集と公開
ホームページのリニューアルオープン、写真資料の一部デジタル化を実現。
4) ラムサール通信の発行
5) 本年度は5号発行。
6) 各種関係団体との協力推進
7) 事務局体制の整備
8) その他

2.海外における主体事業
1) ラムサールCOP8への参加
アジア会員の派遣参加を強化。CDA(チリカ開発公社)のラムサール湿地賞受賞。アジアの湿地ネットワークセンター機能。
2) AWS2001の成果(報告書、ペナン声明)の普及
COP8、ヨハネスバーグサミット、世界水フォーラムなど。
3) アジア湿地イニシアティブの構築(経団連自然保護基金・積水化学工業助成)
委員会設置。ドンホイロ・ラムサール湿地スタディツアー実施。
4) ブルネイ・セリロン島の原生マングローブ林保全事業(経団連自然保護基金・リコー助成)
国際専門家コンサルテーションワークショップ開催。
5) アジア湿地週間(アジアの湿地保全と賢明な利用のための「ラムサール・アジアウィーク」と「湿地イニシアティブ」の構築)立ち上げ(環境事業団地球環境基金助成)
「アジア湿地週間−子どもと湿地」キャンペーンがスタートし、子ども、若ものに
焦点をあてた活動ができた。今期のメインの活動として、谷津干潟で「日中韓子ども湿地交流イン習志野」を実現。
6) 各種会議・活動への参加、調査その他
プサン大学ワークショップ、第6回APNEC(台湾)、IGES湿地環境教育ワークショップ(バンコク)共催など。

3.海外における支援事業
1) インド・チリカ湖のステークホルダーを対象とした湿地生態系の賢明な利用
* チリカ開発公社・パリシュリへの協力事業(地球環境基金助成)
2) 中国・雲南省ラシハイ湿地自然保護区の管理能力の向上
* WI中国への協力事業(経団連自然保護基金助成)
3) バングラデシュの住民参加型森林再生事業への協力
* バングラデシュポーシュへの協力事業(経団連自然保護基金助成)
4) 友好関係団体などの各種活動、その他

U.2003年度の活動・事業計画
〔第5期・中期基本方針をめぐって〕
 今年度は第5期第2年度にあたり、昨年度承認された第5期活動方針にそった活動を本格化させる重要な年度にあたり、その実現について討議がおこなわれました。骨格となるのは昨年度同様「ペナン声明」であり、それを受けてラムサールセンターとして重点的に取り組む課題として準備され、地球環境基金の助成が内定した「アジアの湿地保全と賢明な利用のための『ラムサール・アジアウィーク』と『湿地イニシアティブ』の構築」(第2年度 450万円内定)、ならびに、経団連自然保護基金の助成が決定した「アジア湿地イニシアティブの構築」(第2年度 330万円)であることは昨年度とかわりません。
 また、事業年度で4年目にあたるブルネイ・セリロン島の原生マングローブ林保全事業(経団連、リコー支援 305万円)も異例の継続が決定しました。
それぞれ、別紙として助成金要望計画書が配布され、総会において方針が承認されました。

1.国内基本活動
 国内における活動は会の基本、原点ですから、従来どおり継続します。これまで国内・海外の調査・研究によって収集してきた資料類、特に写真資料をデジタル化して保存することを新たに検討しています。
 また、Tシャツ、バッジ、手ぬぐいなどラムサールセンターグッズが切れたので、改めて適当なグッズ製作を検討中です。
1) ワイズユース・ワークショップ開催
2) フィールド・ワークショップ開催
3) 地域各種ワークショップ開催・協力
4) 各種湿地情報の収集と公開
5) ラムサール通信の発行
6) 各種関係団体との協力推進
7) 事務局体制の整備
8) その他

2. 国内における主体事業
1) 「ラムサール湿地の賢明な利用−ラグーン湿地(汽水湖・潟湖)に注目して」への協力。
* ラムサール条約釧路会議10周年を記念して行われる事業の一つです。RCJ、KIWCほかで構成の実行委員会の主催。ラムサールセンターは事務局を務めます。
2) その他 サロマ湖・チリカ湖交流への協力

3.海外における主体事業
1) 「アジア湿地イニシアティブの構築」(経団連自然保護基金・積水化学工業助成)の継続、深化。
委員会開催。地域ワークショップ開催。第3回AWS開催に向けての具体的討議開始。
2) アジア湿地週間(アジアの湿地保全と賢明な利用のための「ラムサール・アジアウィ
ーク」と「湿地イニシアティブ」の構築)(環境事業団地球環境基金助成)の継続と
深化委員会開催。「世界湿地の日・アジア湿地週間」のアジア同期行動の展開のいっ
そうの広がり。日中韓子ども湿地交流の韓国での開催。
3) ブルネイ・セリロン島の原生マングローブ林保全事業(経団連自然保護基金・リコー助成)のまとめ。
保全管理計画の策定。国際マングローブシンポジウムの開催。
4) AWS2001報告書(英語版)、「ペナン声明」のいっそうの普及。
5) 各種会議・活動への参加、調査その他

4.海外における支援事業
1) ヤムナ川(インド・デリー)の水質モニタリング調査と子どもと地域住民への環境アウェアネス
*インド環境協会の地球環境基金助成による3ヵ年事業の日本側代理人として協力
2) バングラデシュにおける子どもたちへの環境教育と植林事業
*ポーシュの経団連自然保護基金助成による3年計画事業に継続協力
3) バングラデシュにおける湿地保全と賢明な利用のための住民参加型社会開発
* ポーシュの地球環境基金助成による3年計画事業に日本側代理人として継続協力
4) 友好関係団体などの各種活動、その他

V決算・予算
 別紙どおり承認されました。しかし、2002年度は、別紙会計報告に添書したように、収入にくらべて大幅な支出増となり、会員拠出金を異例に積み増しして乗り切らざるを得ませんでした。総会では、活動の活発化にともない活動資金の拡大が必要なことは理解できるが、特定の少数の協力者からの拠出金の追加提供にのみ頼らざるを得ない体制の危うさが指摘され、少しでも財政の健全性を確保するための努力をすることが確認されました。また、昨年度からスタートさせたラムサールセンターの基本的活動支援のための会員拠出金制度への協力をすべての会員に改めてよびかけることになりました。詳しくは別項をごらんください。

W人事
 岩間徹会長、磯崎博司、藤倉良、新庄久志副会長体制で1年を過ごしましたが、会の活動・事業の拡大、とりわけ海外活動の活発化で役員の負担は大きくなっています。現体制の整合性について討議した結果、岩間徹会長の留任が決定。また活動の拡大にともない、会を代表して海外の会議や活動に参加する機会が増え、役員の負担が増しているため、副会長を4人体制にすることが提案され、安藤元一東京農大助教授が推薦され、承認されました。

 以上の活動を方針をもって、ラムサールセンターは今年も、日本とアジアにおけるラムサール条約と湿地の賢明な利用の普及を目標に活動を続けます。会員のみなさんの積極的な協力と参加をどうぞよろしくお願いします。


●会員向けメーリングリストを開設しました。どうぞ参加してください●

 先月から、ラムサールセンターの会員をネットワークしたメーリングリスト(ML)を開設しました。パソコン通信、インターネットの普及に伴って、迅速かつ低コストで行えるコミュニケーションと情報共有の手段として、重要な活動と位置づけてきましたが、会員の平井朗さんの協力でようやく実現できました。
 MLはラムサール通信と発行の目的、意義と同じです。手段(形態)が変化(進化)しただけで、会議、郵便、電話、ファクスに新たなツールが加わったものです。
 ただ、なんといっても同時的、即時的、大容量情報を多数のメンバーが共有できる特色があります。したがって、単に生の情報を流すというより、双方向でのやりとりを多数で公開共有することにこそ導入の意義があるといえます。RCJ活動の基本となる調査・研究、普及・啓発にとってふさわしいメディアといえるでしょう。英語版と日本語版の2種類あります。
 当面、事務局でメールアドレスを把握している日本人会員を日本語MLに登録し、国際会員と日本会員の一部を英語MLに登録しました。登録済みの会員はおわかりのように、すでに活発なコミュニケーションが日々行われています。
 ラムサールセンターでは、これまで郵送してきた「ラムサール通信」を将来、できるだけMLを通じての配送に切り換えていきたいと思っています。ただし、当面これはラムサールセンター会員間のMLです。
 今後このMLを、RCJ活動の武器として、会員間のコミュニケーションに効果的に活用していくために、会員のみなさんに以下の協力をお願いします。

(1) メールアドレスを持っているのに、現在MLに登録されていない会員は、事務局までメールアドレスを知らせてください。すぐに登録します。
(2) すでにMLに登録されている会員で、登録を解消したい方はMLのボランティア管理者の平井さんに連絡してください。登録されているアドレスを変更したいときは自分でできます。方法は、管理人から最初に送られてきたML立ち上げのお知らせメールをご覧ください。
(3) この数週間のML活用の状況から、英語MLと日本語MLでは、配信される情報の内容や頻度に大きな違いがあることがわかりました。ラムサールセンターの活動の対象範囲はご存知のように日本だけでなくアジアに広がり、多くのアジアの湿地関連情報を互いに共有することが、私たちの活動の基礎を支えています。日本語と英語という情報の発信の形が違うことがバリアになって、重要な情報の共有に差ができることは望ましくありません。とはいえ現在の事務局の体力では、英語・日本語ともに対訳をつくることは不可能です。そこで、今後、英語MLにも会員のアドレスを登録します。英語のメールが届くのはどうしてもいやだという人は、申し出てくだされば登録を解消しますが、アジアの会員たちとの臨場感あるコミュニケーションの実態を知っていただくためにも、積極的な参加を期待します。
(4) メールアドレスを持っていない会員の方、ご心配なく。従来どおりのラムサール通信の発行・送付、電話やファクス、またワークショップ、シンポジウムの開催など、アナログな方法での連絡、情報交換の場は、依然としてRCJ活動の前提として継続します。どうぞよろしくお願いします。


●第14期(2003年度)の会費、受付中です●

 2003年度の会費を納めてください。ラムサールセンターの会費納入率は、このところ50%程度を推移していて、けっして高いとはいえません。しかし、会費は活動の基盤を支えるたいせつな礎です。先の総会で、会費納入率達成目標100%の方針が出されました。
 ボランティアスタッフの岡本嶺子さんの協力で、1999年以降の各会員の会費納入状況が明らかになりましたので、それを個別にお知らせするとともに、郵便振替用紙を同封します。どうぞご協力ください。
 なお、このラムサール通信に上記郵便振替用紙が同封されていない方は、現在、会員ではありません。入会は常時受け付けています。希望する方はどうぞ事務局までご連絡ください。


会員拠出金制度にご協力ください

 現在のRCJ活動の基本活動資金の大部分が、会員の自発的な拠出金によって支えられていることは、同封の会計報告にも報告したとおりです。この会員拠出金制度は、第12期総会(2002年度)の総会で、それまで会員から短期融資金として随時、非公式に協力を受けてきた形を発展させ、さらに広範に継続的に協力を募っていくことにしたものです。1口10万円から、原則として1年ごとに返済の期間限定方式をとり、自動継続ありで、常時受け付けています。
 株式会社でいえば、1株10万円の株式を買って株主になるようなものですが、現在はその「株主」が特定の会員に限られ、少数の大株主が多額の拠出金を異例に負担している状況が生まれています。第13期総会ではこの実態を望ましいものではないとし、少しずつ、できるだけ多くの会員が支えるのがのぞましいとして、改めて拠出金協力のよびかけをすることにしました。どうぞよろしくご協力ください。

ラムサールセンター会費(1年8000円)、会員拠出金(1口10万円から)は以下の口座で受け付けています。現金書留でもけっこうです。よろしくお願いします。
・郵便振替口座:00130−7−547767  名義:ラムサールセンター 
・銀行口座:三井住友銀行  支店:下丸子(しもまるこ)
普通預金:0684084 名義:ラムサールセンター事務局長中村玲子



ラグーン会議(釧路/7月23-25日)間近!

 前号でご紹介しましたが、7月23日〜25日まで釧路市で「ラムサール条約釧路会議開催10周年記念事業 国際ワークショップ『ラムサール湿地の賢明な利用−ラグーン湿地(汽水湖・潟湖)に注目して』が開催されます。国内だけではなく、インド、ネパール、バングラデシュ、タイなど、海外からの参加申し込みも多数届いています。
 口頭発表やポスターセッションのお申し込みは締め切ってしまいましたが、当日参加は今からでも受け付けます。ラグーン湿地の保全と修復、賢明な利用についてともに考えましょう。
詳細はラムサールセンターのホームページ(http://homepage1.nifty.com/rcj/)をご覧ください。


●書 籍 紹 介●

ラムサールセンターの仲間が執筆、編集をした冊子、書籍をご紹介します。
○『世界の宝・雁が渡る能代平野 小友沼』
著者:畠山 正治  発行:秋田文化出版株式会社  ¥1200
 ガンやハクチョウの越冬・帰行の中継地として有名な秋田県能代市の小友沼。そこに棲む生き物たちや沼の歴史、社会問題などを、豊富な写真でわかりやすく解説しています。
○北方圏の自然と環境−エコハンドブック− 
発行:北方圏フォーラム  財団法人 北海道環境財団 
 北海道やアラスカ、ロシアといった「北方圏」の森林や動物、人々の暮らしを説明した中学生向け環境教育テキスト。(実費でお分けします)
○Doing Education at Wetland Sites ? Examples and Modalities from Asia
発行:地球環境戦略研究機関 (IGES)  
今年の1月、タイ・バンコクにて開催された湿地環境教育ワークショップ(IGES主催)の成果物。ご希望の方はIGESのビシュヌ・バンダリさん(Tel:0468-55-3842/FAX:0468-55-3809)まで。

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