ラムサール通信
2011年4月6日発行 第137号


東日本大震災で亡くなられた方、被災されたみなさんに、
お悔みとお見舞いを申し上げます。

「アジア湿地シンポジウム(AWS)」の準備が進んでいます

 かつてない規模の地震と津波と原発事故に見舞われた日本に、世界130か国以上から支援の申し出が届いています。そのなかには、これまで日本から支援や協力を受けてきた途上国が数多くふくまれています。ラムサールセンター(RCJ)にも地震発生直後からインド、ネパール、中国、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、バングラデシュなどから、お見舞いと激励のメールがつぎつぎに届きました。発足以来21年間、アジアの湿地保全の分野でネットワークを築く活動をつづけてきたRCJですが、改めて地球はつながっているとの思いを強くしています。

 日本の東北沿岸を襲った未曾有の自然災害問題は、ラムサール条約決議VIII.4「統合的沿岸域管理(ICZM)に湿地の問題を組み込むための原則及びガイドライン」や、決議IX.9「自然現象に伴う影響の防止と緩和におけるラムサール条約の役割−人間の活動が誘発あるいは悪化させる場合を含む」と深く関係しています。期せずして開催されるAWSサバとAWS無錫が、この問題に関しての議論を深める場としても貢献できることを期待します。被災地とアジアをつなぎ、この問題を「ラムサール」「国際協力」として、なにができるか、みんなで考えていきましょう。

 両シンポジウムとも、参加登録を受け付け中です。詳しくは以下をごらんください。

 AWSサバ: http://awssabah.com.my/

 AWS無錫:       http://homepage1.nifty.com/rcj/japanese/AWS_2011_Wuxi_FA_Final_20110221.pdf

 2011年度のラムサールセンター(RCJ)活動は、この2回の「アジア湿地シンポジウム」開催(7月・マレーシア、10月・中国)(日本経団連自然保護基金助成内定)と、「ESDのためのKODOMOラムサール」(地球環境基金に助成申請中)を中心として進めていきますが、ESDへの取り組みのなかでも、「持続可能な開発」の視点からこの大災害問題を考えていければと思っています。


   ●ラムサールセンター事務局スタッフを募集します●

   自然保護、国際協力、湿地CEPA活動に関心があり、東京・大田区の事務局に平日勤務できる方。アジアでの活動もありますので、海外出張が可能で、英語でのコミュニケーションや事務作業が可能な方を希望します。詳しくは事務局までお問い合わせください。



●第87回<ワイズユース>ワークショップの報告●

「市川智子さんマレーシア赴任の報告と激励」

 201134日(金)に渋谷区勤労福祉会館で、第87回<ワイズユース>ワークショップが開催されました。JICA-BBECU事業(マレーシア)に専門家として赴任する市川智子さんの壮行会をかねたワークショップで、なんと60人の参加者で会場はいっぱいになりました。
 前半は藤倉まなみさん(桜美林大学教授)によるESDのショートレクチャー、環境省野生生物課の柳谷牧子さん、JICA専門員の城殿博さん、JFGE海外派遣研修生の黒澤優子さんと塩塚祐太さんの近況報告などがあり、後半はKODOMOバイダバに参加してきた子どもたちや市川さんの家族、学生時代の友人、元上司・同僚の日本野鳥の会のみなさん、愛知県から駆けつけた友だちなどが和気あいあいの、とてもにぎやかな壮行パーティとなりました。
 市川さんは7日から、マレーシア・コタキナバルに拠点をおくJICA-BBEC IIチームの一員として、元気に、楽しく仕事に励んでいます。





●湿地の学校ネットワーク<ボルネオ編>報告●

−ボルネオのマングローブと生物多様性を満喫してきました−

 201131519日、マレーシア・サバ州サンダカン市で、「湿地の学校ネットワーク<ボルネオ編>」が開催されました。「湿地の学校」は、アジアの子どもたちが、湿地の保全と賢明な利用を学び、湿地保全活動に取り組む能力を養うとともに、国際協力を実践する環境教育活動で、WI中国が中心になってアジア各地で展開されてきました。
 今回は、日本、中国、韓国、タイ、バングラデシュ、マレーシアの6カ国から子どもたちが集まりました。日本からは、藤前干潟の伊藤優衣歌さん(高2)と吉井友佳子さん(中3)、矢並湿地の杉山賢太さん(高2)、琵琶湖の山本賢樹さん(高1)と日田琥珀さん(小6)が、子ども参加者として参加したのに加え、藤前干潟活動センターの戸苅辰也さん、RCJの中村玲子さん、佐々木優さん、深澤真梨奈さん、大原みさとさん、チェン・ケリンさん(中国会員)、サノワ・ホセインさん(バングラデシュ会員)が参加。マレーシアに赴任したばかりの市川智子さんも、JICA-BBECチームの担当として参加しました。
宿泊場所は熱帯雨林の中のロッジで、食事中も鳥やリスの鳴き声が聞こえる自然あふれる場所でした。プログラムはボルネオ島のサンダカン市を中心に、キナバタンガン川の河口(ラムサール登録湿地)から舟で遡ってマングローブ林を観察したり、川沿いの集落を訪問して魚捕りの網づくりや料理の体験など地域住民の暮らしを体験したり、熱帯雨林のキャノピーウォークを歩いたり、ピロックオランウータンリハビリセンターで保護されたオランウータンの見学や、植物園で熱帯の植物を観察しました。
 夜は熱帯雨林観察センターで、子どもたちだけで会議をおこない、経験したことを話し合ってボルネオの自然や暮らしを描いたポスターを作りました。また、17日の夜は文化交流会で、国ごとに伝統衣装を着た子どもたちが伝統の音楽やダンス、武道などを披露して交流しました。日本の子どもたちは浴衣やジンベエを着て、「世界に一つだけの花」を歌いました。
 平均気温30℃という暑い気候の中、たびたびスコールが降って湿気が高い過酷な環境でしたが、1日6回(朝食、午前のティータイム、昼食、午後のティータイム、夕食、夜食)もある食事でエネルギーを補給し、マレーシアの暮らしを実際に体験しながら、熱帯雨林の自然と人々の文化を学習してきました。 
 なお、「湿地の学校<ボルネオ編>」の詳しい報告は、RCJホームページに掲載します。




 KODOMOバイオダイバシティ「活動報告・記録集」とDVDが完成●
 20092010年度の2年間にわたった「KODOMOバイオダイバシティ−生物多様性条約と生きものを守る子どもたちの運動」(地球環境基金助成)のまとめの報告書が刊行されました。2010年度のバイダバ活動(藤前干潟、蕪栗沼・周辺水田、琵琶湖、CBD_COP10名古屋)に参加した子どもたちの感想文も載っています。また、西出都芳さん(加賀市)がボランティアで撮影・編集してくれた「KODOMOバイオダイバシティ国際湿地交流in琵琶湖」の映像記録のDVDもできあがりました。
 KODOMOバイダバに参加してくれた子どもたちにはそれぞれ1部ずつ送ります。多少残部がありますので、ご希望の方は、事務局までご連絡ください。


●新入会員を募集しています●

 ラムサールセンターの活動は、趣旨に賛同し、会費を負担し、共同で活動してくれる会員によって支えられています。現在、日本、中国、韓国、マレーシア、タイ、インド、ネパール、バングラデシュ、イラン、台湾、オーストラリアの11か国・地域に約110人の会員がいます。
 入会は随時受け付けています。会則や活動の方針は、ホームページでご覧になれます。
 今年(2011年)は、マレーシアと中国で「アジア湿地シンポジウム」を開催することはお知らせのとおりですが、来年(2012年)6月にはルーマニアで「ラムサールCOP11」、10月にはインドで「CBD_COP11」と、大きな地球環境国際会議がつづきます。会員になって事務局の仕事を手伝い、活動に参加してくれる人を募集しています。
 なお、RCJ会員のみなさんには、このラムサール通信とともに、会費納入のお知らせ別紙をお送りしています。



●会員の近著ご案内●

      藤倉良著「エコ論争の真贋」(新潮新書)

法政大学教授の藤倉良先生(ラムサールセンター元会長)の新著です。 2006年に刊行された「環境問題の杞憂」(新潮新書)の続刊的な性格の本書が、今回とりあげているテーマは「ゴミとリサイクル」、「地球温暖化」、そして「生物多様性」問題。
 豊富な科学的データや調査結果を基礎にしていながら、軽快な語り口で明快に解説する「藤倉節」は本書でも健在です。700円。




   JICAプロジェクトヒストリー・シリーズ

細野昭雄著「南米チリをサケ輸出大国に変えた日本人たち」
(ダイヤモンド社)

二ノ宮アキイエ著「車いすがアジアの街を行く」(同上)
 原雅裕著「西アフリカの教育を変えた日本発の技術協力」(同上)


2008年、JICAJBICの統合に伴う新生JICAの発足を機に、国際協力研究の独立部門として発足した「JICA研究所」が企画提案した新シリーズです。国際協力の前線でプロジェクトの遂行に携わった日本人たちが、さまざまな課題や困難に直面しながら、現地の人との協力のもとにどうやって仕事を成し遂げてきたのか。JICAのプロジェクト報告書には書かれることの少なかった、現場の人間ルポルタージュです。 中村玲子事務所が編集に協力しました。
 国際協力の仕事に興味のある方におすすめです。各1500円。



Climate Change Adaptation and International Development:

Making Development Cooperation More Effective

藤倉良編著(JICA研究所) 

 こちらはJICA研究所の重点研究領域「環境と開発/気候変動」の研究成果としてまとめられた専門書。アジア、アフリカ、欧米の専門家の研究事例を藤倉良先生が中心になって編集し、新設JICA研究所のはじめての具体的業績ともいえるもので、もちろん英語。Amazon.com価格で5543円。





●震災後、被災地から届いたメッセージを紹介します●

・大崎市(蕪栗沼・周辺水田)、鈴木耕平さんから「大崎市も震度6強の揺れが長く続き、家の倒壊や、道路の亀裂陥没,隆起など被害が多くでました。ただ、海辺の地域と違い、津波の被害がありませんでしたので、徐々にライフラインも回復してきております。蕪栗沼・周辺水田の皆様ともほとんど連絡が取れた状態です。通常の生活に戻るのにはもう少しかかりそうですが、今後ともよろしくお願い致します」(2011年3月22日)

・トキ・プロジェクトで応援してくれている「やまや」(仙台市)、小峰礼子さんから「幸い、当時来店中のお客さま、全従業員は無事が確認できております。宮城で5店、福島と茨城で1店ずつ営業が出来ないままで、営業店においても物流がまだまだ滞り、品不足や営業時間短縮などお客様にはご迷惑をおかけしています。一日も早い復興に向けて歩んでまいります。皆でがんばるしかないのです」(2011年4月6日)

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