ラムサール通信
2007年7月4日発行 第109号



●ラムサールセンター第17回総会報告●

2007年5月27日/於:JICA地球広場

 ラムサールセンター(RCJ)第17回総会が、5月27日(日)午後1時30分〜、東京・港区のJICA地球広場の会議室で開催され、年度(2006.4〜2007.3)1年間の活動・会計報告を承認し、新年度の事業・活動計画、予算、人事などを決定しました。詳細を報告します。
 会員の出席は安藤(会長)、磯崎(副会長)、武者(同)、亀山(監事)、中村(事務局長)、臼井、岡本、城殿、苑原、名執、林、宮崎、築地、小澤、神辺、阪上、石橋でした。会員には議案を送付済ですが、必要ならご連絡ください。

*** 第17回総会報告 ***
【会長挨拶(安藤)】:厳しい財政ながら活発に活動を展開、大きな成果をあげた。NGOは、行政にできないところをカバーするのが基本。RCJにしかできないことを精査し、効率的な事業継続を。
【2006年度(2006年4月〜2007年3月)事業・活動報告】
基本方針
 2006年度事業・活動は、COP10(2008年韓国)を目標とした「第6期中期計画(2006年度〜2008年度)」の初年度として、次の3つの方針、活動を軸に展開されました。
@ 「第4回アジア湿地シンポジウム(AWS)」開催にむけての調査研究、地域会議の積み上げ。
A COP10「KODOMOラムサール世界会議」をゴールとしたラムサール条約への子ども参加運動。
B アジアと国内の「登録湿地の拡大」から「湿地の保全・管理」へ、「量から質」への具体的な運動。

1 海外における主体事業
「アジア湿地イニシアティブ・フェーズU」:(KNCF、河川防災センター助成事業)
 AWS実現にむけ、アジアの湿地専門家と調査研究を積上げていく事業で、2007年8月30日〜9月1日、ベトナム国ニャチャンで、「海洋・沿岸湿地保全国際ワークショップ」を開催。ベトナム政府、IUCN、JICAなどと共催。参加者100人余。サンゴなど沿岸湿地の保全管理、教育とネットワークなどについて議論。報告書(英文版)を発行。事務局へ請求を。

2 海外における支援活動
WI中国「日中韓子ども湿地交流」:(JFGE助成/3年事業の2年目)
 中国蘭州市で開催。日本の子ども代表5人、韓国6人が参加。水車園小学校で交流後、黄河を船で50q遡り、有名な石窟「炳霊寺」を訪れ、黄河と湿地と人びとの暮らし、文化を見学。
パリシュリ「チリカ湖の環境アウェアネス活動」:(JFGE、KNCF/3年事業の1年目)
 インド・チリカ湖で開催された国際ワークショップへ事務局から代表を派遣。
その他:
 FEM(ビシュヌ代表)「ネパールの湿地の文化的価値の研究」(KNCF/単年度)、バングラデシュポーシュ「沿岸湿地のマネジメント」事業、韓国NGOなど、アジア事業に活動支援サポートを実施。

3 国内における主体事業、基本活動
「ラムサール条約を子どもたちのものにする『KODOMOラムサール』」:(JFGE助成事業)
  2006年度最大の活動。「KODOMOラムサール湿地交流」を全国4ブロックで地元自治体、NGOなど多くの団体が共催、環境省が後援。子ども200人、全参加者400人の大イベントとなり「KODOMOメッセージ」を採択。各地で大きな反響をよびました。
10月7〜8日  北海道ブロック湿地交流/濤沸湖(網走市、小清水町ほか共催)
11月18〜19日  近畿中国ブロック湿地交流/宍道湖中海(島根県、鳥取県ほか共催)
12月2〜3日  東北関東ブロック湿地交流/佐潟(新潟市ほか共催)
1月27〜28日  九州沖縄ブロック湿地交流/漫湖(那覇市ほか共催)

登録湿地への各種支援活動
@「湿地の恵み―観光と物産展(エコライフフェア出展)」:(WIJとの共催事業)
 ラムサール登録湿地支援の新規事業。環境省、WIJと共催で「エコライフフェア」にブースを出展。各地の名産展示、湿地クイズなどが好評。継続事業として、2007年も6月2〜3日に実施ずみ。
A「登録湿地マーク」の製作と普及:
 日本のラムサール条約登録湿地の保全、管理を推進するツールとしてRCJが提案、環境省推奨、岡本一宣デザイン事務所製作で実現した「ラムサールマーク」。登録地に掲示し、資料やグッズに印刷することで、国際的に重要な湿地であることを明示し、その認識を深め、地元に誇りと自信をもってもらうのが狙い。すでに北海道内の12湿地に提供、看板が設置されるなど活用がはじまっています。今後、マーク入りグッズなど記念品を製作、販売するなど全国への普及を準備中。
B「ラムサールハンドブック」の製作、販売、配布:
 登録湿地マーク同様、保全管理、普及啓発ツールとして中村玲子事務所、自然情報事務所(林聡彦代表)の協力で8000部発行。環境省から大量購読されるなど好評。各種会議で配布も。定価250円。
Cその他の各種協力:
 仏沼(青森県三沢市)ワークショップへの講師派遣、琵琶湖の西湖の追加拡大登録で近江八幡市の会議参加など、例年どおり登録湿地や未登録湿地への普及啓発活動をおこないました。
D調査研究:
 新たに登録された20湿地を中心に、「阿寒湖、仏沼、三方五湖、藺牟田池、屋久島永田浜、慶良間諸島海域、名蔵アンパル」で調査、取材を実施。佐渡島のトキの人工飼育と棚田復元事業の調査も実施。
「生きものと人・共生の里を考える会議」:
 新規事業。RCJが山口県八代盆地で10年以上取り組んできた、「ナベヅルと水田」をテーマにした活動が環境省、農水省、文化庁などとの共催によって標記事業としてスタート。第1回シンポジウムを5月26〜27日、八代盆地のある山口県周南市で開催。これは、絶滅の危機にある野生生物と里山・湿地生態系の保全のあり方を考える意欲的な事業で、ラムサール条約と生物多様性条約の普及啓発をめざし、鹿児島県出水市(ナベヅル)、兵庫県豊岡市(コウノトリ)、新潟県佐渡市(トキ)の代表が一堂に会し、経験交流と連携強化を協議しました。2007年度は佐渡市で開催予定。

4 RCJの基本活動
RCJ設立以来、もっとも重視するNOGの基本活動として次のように実施。
ワイズユースワークショップの開催:
 ・6月17日 第66回「新規登録湿地の保全と賢明な利用」「バングラデシュの湿地保全」
 ・12月8日 第67回「人と湿地と生きものの共生を考えるシリーズ@ トキの野生復帰」
 ・3月23日 第68回「ラムサール条約COP10にむけて」
ラムサール通信の発行:
第100号〜108号を発行。現在、約450部を郵送しています。
ホームページの開設:
「ラムサール通信」を中心に情報を配信。KODOMOラムサールの報告など内容を充実しました。
KODOMOラムサールメーリングリスト:
 子どもたちの先頭に立って運動を進める「子どもリーダー」の情報交換ツール「メーリングリスト」を開設。密接な連絡体制をつくり、子どもたちの意見を反映させました。

5 人事、事務局体制、会員
 安藤元一(東京農大准教授)さんを新会長に迎え、役員会、事務局会議と効率よく運営でき、数多くの会議、イベントにも役員、会員が積極的に参加。事務局ボランティアも日大、川村女子大はじめ多くの方たちにご協力いただきました。ありがとうございました。

6 決算報告
会員に送付したとおり、監事による監査をへて、総会で承認されました。

【2007年度(2007年4月〜2008年3月)活動・事業計画】
基本方針
 2007年度の活動・事業は、第6期中期計画の第2年度として、前年度方針を継承、発展させる計画ですが、新たに「トキの野生復帰支援事業」が追加され、次の4本柱で進めます。
@ 「第4回アジア湿地シンポジウム(AWS)」開催とCOP10(2008年10月/韓国)への準備。
A 「KODOMOラムサール全国大会」の開催と「COP10世界大会」の準備。
B 登録湿地を中心とした「湿地の保全・管理・計画の推進」支援と普及啓発の取り組み。
C トキの野生復帰支援CEPA運動の推進。

1「アジア湿地イニシアティブ・フェーズU」:(KNCF助成事業)
 「第4回アジア湿地シンポジウム」開催を目標とする事業で、経団連自然保護基金(KNCF)400万円の助成決定。北海道河川防災研究センターに助成要請中。具体的な活動計画は次のとおり。
「AWI委員会」の開催/AWSの開催準備、テーマの検討など。バンコクで8月に開催予定。
「ISC(AWS国際準備委員会)」の設置/開催地、共催団体の決定によりメンバーを確定、招集へ。
「アジア地域ワークショップ」の開催/AWSへ直結させる検討会議。ソウルで1月開催予定。
「AWS」開催地の決定/共催国などとの調整。6月、ベトナム政府と予備交渉を開始しました。

2「ラムサール条約を子どもたちのものにする『KODOMOラムサール』」:(JFGE助成事業)
 
地球環境基金(JFGE/3年計画の2年目)550万円の助成決定。当初の計画では、初年度に国内4地域で「ブロック湿地交流」、第2年度に「全国大会」、第3年度に「COP10世界大会」を想定していましたが、国内各地から「地域交流」の再開催、「全国大会」開催立候補、「世界大会」招致表明、ILECから「世界湖沼会議(インド)」での子ども会議開催要請、ラムサール条約事務局(CEPA担当)から「COP1〜9開催地の子ども代表のCOP10への招待」提案などがあり、事業計画の組み立てを見直し中です。現段階での事業計画は次のとおりです。
7月27〜31日 日中韓子ども湿地交流「韓国」/ソウル大学ほかと共催(安山市、シワ湖)
釧路湿原、谷津干潟、佐潟、琵琶湖、中海宍道湖、八代、漫湖から13人の子どもたちが参加。
9月8〜9日 KODOMOラムサール琵琶湖/近江八幡市ほかと共催(琵琶湖・西湖)
10月7〜8日 KODOMOラムサール宮島沼/美唄市ほかと共催(宮島沼)
10月29日〜 世界湖沼会議・世界子ども湿地会議/ILEC、インド政府ほかと共催
2008年1月 日中韓子ども湿地交流「中国」/WI中国ほかと共催(中国・ポーヤン湖)
2月9〜11日  KODOMOラムサール全国湿地交流/島根県、鳥取県と共催(宍道湖、中海)
8月 KODOMOラムサール国際湿地交流/新潟県と滋賀県から招致の非公式打診があり調整中
10月末 COP10「世界大会」(韓国)

3「湿地の保全・管理・計画の推進」支援と普及啓発の取り組み:
 
前年につづき、各種活動を継続する計画です。ラムサールマークの普及、グッズの開発なども予定。

4「トキの野生復帰支援」CEPA活動:
 
オーストラリアのワインメーカー「バンロックステーション」の資金助成(単年度400万円×3年)が内定した3年計画の新規事業で、概略、次の内容で進めます。
目的/ @トキの野生復帰(再導入)と生息湿地生態系の再生事業を成功させる支援と体制構築。
A絶滅種再導入と生物多様性保全の意義、人と生きものの共生にむけた教育と普及啓発。
Bトキ支援をとおして、第二の絶滅種をつくらない国民的な合意形成と取り組みの促進。
活動/ @トキの野生復帰、絶滅種の再導入、湿地生態系の再生、生物多様性に関する調査、研究。
Aトキの野生復帰、生態系再生事業の意義、重要性に関する国内外でのCEPA活動の推進。
B生物多様性条約と生物多様性保全の重要性に関するCEPA活動の推進。
Cそのために必要な普及啓発環境教育用CEPAツールの開発、製作、配布。
D必要とされる各レベルの各種ワークショップ、国際シンポジウムなどの開催。
組織/ トキ支援専門委員会(仮称)を設置し、事業推進本部とする。委員長・磯崎博司(明学大)
期間/ 3年計画事業とする。
 以上の事業概要にもとづき6月27日に第1回専門委員会を開催。具体的な活動計画、戦略づくりがはじまりました。この事業は会員の協力なしには進められません。専門委員会への積極的な参加を要請します。なお、当面の活動としては、10月13〜14日、新潟県佐渡市で開催予定の「生きものと人:共生の里シンポジウム」への参加、支援を準備しています。またこの事業は、2010年に名古屋市で開催予定の「生物多様性条約COP10」を展望しながら進める計画です。

5 その他:
 RCJの基本活動を前年どおり、これまでどおり進めていきます。

6 予算計画:
 会員に送付したとおり、総会で承認されました。

7 会員:
 現在の会員数は80人(アジア会員26人)。昨年総会の決定どおり、会費の長期未納会員は会員名簿から削除しました。再登録の方は随時受け付けますのでご連絡ください

8 人事・事務局体制:
 
新庄久志副会長から辞任の申し出があり、承認。新たに林聡彦さんが副会長に選任されました。
 〔新役員体制〕会長 安藤元一  副会長 磯崎博司/岩間徹/武者孝幸/林聡彦(新任)/事務局長 中村玲子  副事務局長 築地珠子  会計監事 亀山保 



●第69回<ワイズユース>ワークショップ報告●

 第69回<ワイズユース>ワークショップが、5月27日(日)に、東京・広尾のJICA地球広場で開催され、28人が参加しました。これは、「人と湿地と生きものの共生を考える」シリーズの第2回として「生物多様性とCEPA」をテーマに行なわれたもので、安藤元一さん(東京農業大学准教授)から「日本の生物多様性保全の課題と問題点」について話題提供があった後、山岸哲さん(山階鳥類研究所所長)に、「適応放散を鍵にして生物多様性を考える−マダガスカルを例に」というテーマで、たくさんの動物の写真を用いて講演をしていただきました。
 第2部は、「生物多様性条約とCEPA−COP10の成功に向けて」というテーマでパネルディスカッションを行ないました。吉中厚裕さん(環境省野生生物課)から、生物多様性条約第10回締約国会議に関しての発言をいただくなど、活発な意見交換が行なわれました。
 会員の参加は、安藤(会長)、磯崎(副会長)、武者(同)、亀山(監事)、中村(事務局長)、臼井、岡本、城殿、苑原、名執、林、宮崎、築地、小澤、神辺、阪上、石橋さんでした。


●「湿地の恵み展」今年も盛況でした●

 6月2日(土)〜3日(日)、東京都立代々木公園で開催されたエコライフ・フェア2007(環境省主催)で、昨年に引きつづき、ラムサールセンターと日本国際湿地保全連合の共催で「湿地の恵み展〜ラムサール条約湿地の観光・物産・楽しみ方〜」を開催しました。これは、日本のラムサール条約登録湿地33カ所のPR、湿地保全の普及啓発を目的に実施されたもの。当日は、各湿地の美しいポスターや観光資料、物産などを特設ブースに展示し、参加団体担当者やボランティアなど述べ25人によって、続々と訪れる人々に湿地の説明、解説、物産の紹介と試供・試食品の提供、子ども向け湿地クイズ、湿地保全のための募金活動を行いました。環境省作成の33湿地を紹介したチラシ2000部も足りなくなるほどのにぎわいで、ブースは人でいっぱいでした。
 今回は次の17団体が参加し、うち4団体が担当者を派遣してくれました。【参加団体】北海道、釧路市、網走市、幌延町・法昌寺とんこり堂、NPO法人サロベツ・エコ・ネットワーク、NPO法人霧多布湿原トラスト、釧路国際ウェットランドセンター、雨竜沼湿原を愛する会、大崎市、新潟市、有限会社自然計画、近江八幡市・(財)ハートランド推進財団、島根県、鳥取県、加賀市、秋芳町、九重町


●第70回<ワイズユース>ワークショップのお知らせ●
「人と湿地と生きものの共生を考える−そのB」

 7月14日に、第70回<ワイズユース>ワークショップを下記のとおり行います。「人と湿地と生きものの共生を考える」シリーズの第3回です。

日 時:2007年7月14日(土) 午後1時〜4時
場 所:明治学院大学 白金キャンパス 本館8階法律科学研究所会議室
  (港区白金台1-2-37)
  地図:http://www.meijigakuin.ac.jp/access/shirokane/
話題提供:「トキの野生復帰に向けての環境省の取り組み(仮)」
       中村昌孝(環境省自然環境局野生生物課)
今後の普及啓発、環境教育活動を中心に討議
参加費:一般2000円 会員・学生:1000円   *終了後は恒例の懇親会です。



●KODOMOラムサール琵琶湖のお知らせ●

 昨年度、北海道、東北・関東、近畿・中国、九州・沖縄と4つのブロックで行なった「KODOMOラムサール」活動を、今度は、日本最大のラムサール条約登録湿地「琵琶湖」を舞台に、9月8日〜9日、滋賀県内の子どもたちを対象に開催します。琵琶湖最大の内湖である「西の湖」や湖内の有人島「沖島」を訪れ、湿地をテーマに学習・交流をします。主に滋賀県の子どもたちが対象の催しですが、県外の子どもたちで興味のある方はラムサールセンターまでご連絡ください。詳細は同封のチラシをご覧ください。


●トキと湿地専門委員会発足●

 6月27日(水)に横浜で、総会の合意を受けて、第1回トキと湿地専門委員会を開催し、以下のメンバーで専門委員会活動を開始しました。引きつづき、委員となって活動に協力してくださる方を募っています。意思のおありになる会員は、事務局までご連絡ください。
委員長:磯崎博司 委員:安藤元一、名執芳博、武者孝幸、中村玲子


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