ラムサール通信
2006年12月22日発行 第105号


大盛会!「KODOMOラムサール」東北・関東ブロック湿地交流●

  「KODOMOラムサール」東北・関東ブロック湿地交流が、12月2〜3日に新潟市「佐潟」で開催されました。佐潟のラムサール条約登録10周年記念「鳥がつなぐ潟と人〜佐潟10ラムサールフェスティバル」にジョイントして行われたもので、東北・関東地域のラムサール条約登録湿地7カ所(仏沼、伊豆沼・内沼、蕪栗沼・周辺水田、佐潟、尾瀬、奥日光の湿原、谷津干潟)と新潟市の鳥屋野潟、福島潟、そして北海道の濤沸湖からの代表78人の子どもたちが参加しました。
 一日めは野外プログラムで、鳥屋野潟と福島潟を訪問し、カモやハクチョウなどの水鳥を観察しました。福島潟では、地元の葛塚小学校の児童が水先案内人を務めてくれました。夕方、新潟市の超高層ビル朱鷺メッセの屋上から、新潟市内を眺め、地形や歴史について学習しました。
 二日めは、早朝、雪が舞う中、佐潟でハクチョウの飛び立ちを観察。その後、「KODOMOラムサール」会議がスタートしました。各地の湿地について、子どもたちから工夫をこらした紹介と活動報告が行われました。2時間にわたる13組の発表を、子どもたちはメモをとりながら真剣に聞いていました。
 お昼ごはんは、佐潟のめぐみのハスの実おにぎりと、地元赤塚産の野菜トン汁をいただき、新潟の伝統芸能「太々神楽舞」を楽しみました。
 午後は、会議で学習した成果を次の九州・沖縄ブロック湿地交流へつなげる、「KODOMOメッセージ」づくりに取り組みました。メッセージに盛り込みたいキーワードを出し合い、「湿地は命の源、みんなの宝〜大事に守って次の世代へつなげよう」とまとめました。「命の源」とは何か、それぞれの湿地において「宝」とは何かなど、子どもたちの白熱した話し合いの結果できあがったメッセージです。
 今回、東北・関東ブロック開催にあたり、「佐潟10ラムサールフェスティバル実行委員会」の多大なご協力に感謝します。
 次回は、1月27日〜28日に沖縄県那覇市・豊見城市の「漫湖」で、九州・沖縄ブロック湿地交流が6カ所の登録湿地すべてから代表が参加して開催されます。


●「KODOMOラムサール湿地交流」近畿・中国ブロック報告●

 前号で簡単に報告しましたが、11月18〜19日、鳥取県(米子市など)と島根県(出雲市など)で「KODOMOラムサール」近畿・中国ブロック湿地交流が開催されました。近畿・中国地域のラムサール条約登録湿地の中海、宍道湖、秋吉台、三方五湖、琵琶湖、そして同地域の主な湿地である八代(山口県周南市)、麻里布川(山口県岩国市)、また、他地域から漫湖(沖縄県)、さらに海外代表者として韓国のウーポ湿地、シワ湖から、あわせて31人の子どもたちが参加しました。
 一日めは、鳥取県の米子水鳥公園で、辻井達一先生(日本国際湿地保全連合会長)が「人と湿地」をテーマに基調講演を、つづいて各地の湿地の紹介と活動報告が行われました。どの報告も、日ごろの実践にもとづく、レベルの高い内容でした。
 二日めは、午前中、島根県の宍道湖自然館ゴビウスを見学し、宍道湖の生きものについて学習。その後、隣接の施設で、宍道湖のめぐみを味わう「湿地の賢明な利用」実習プログラムを実施。宍道湖産のハゼ、スズキ、シジミなどを料理して、昼食を楽しみました。
 午後は、島根県立青年の家サンレイクで、会議で話し合った成果を次の東北・関東ブロックにつなげる「KODOMOメッセージ」を作成。子どもたちの真剣な話し合いの末、「ワイズユース!楽しもう親しもう、身近な自然。ぼくたちが未来の湿地をガイドする」とまとめました。これは、12月2〜3日に、東北・関東ブロック湿地交流で紹介・報告されました。


●「KODOMOラムサール」全国湿地交流、来年開催予定!●

 ラムサールセンターでは、今年度から3年計画で、「ラムサール条約を子どもたちのものにする『KODOMOラムサール』」(地球環境基金助成事業)に取り組んでいます。今年度は、日本を北海道、東北・関東、近畿・中国、九州・沖縄の4ブロックに分け、地域ごとにラムサール条約登録湿地を中心とした湿地の近くの子どもたちを集め、「ブロック湿地交流」を実施しています。おかげさまで、これまでに3ブロックでの湿地交流が無事終了し、あわせて22湿地から200人近くの子どもたちが参加しました。あとは、1月27日〜28日に九州・沖縄ブロックを残すばかりです。

 そして来年度は、ブロック湿地交流に参加した子どもたちを中心に、日本のラムサール条約登録湿地33カ所の子どもたちが一堂に会する「KODOMOラムサール」全国湿地交流を開催する予定です。現在、開催地の候補として、和歌山、滋賀、島根・鳥取、新潟からご関心、お問い合せをいただいています。できるだけたくさんの子どもたちに参加してもらうために、関係都道府県、市町村、学校、NGO、企業などのご支援、ご協力をお願いします。全国湿地交流の詳細は、決まり次第、おしらせします。



●ラムサール登録湿地マークが誕生。保全管理、普及のシンボルとして●
「霧多布湿原」に第1号看板が立ちました

 日本のラムサール条約登録湿地は、COP9(2005年、ウガンダ)開催を機に20湿地が追加され、合計33湿地になりました。九州・沖縄6湿地、中国3湿地、近畿・中部5湿地、関東4湿地、東北3湿地、北海道12湿地と全国に広がり、サンゴ礁、マングローブ林、砂浜海岸、水田、鍾乳洞など湿地のタイプも多様性にとみ、ラムサール条約登録湿地は名実ともに地域の身近な自然といえるようになりました。全国33か所は国立公園の数を上回り、日本はアジアで最も多くの登録湿地を抱える国になりました。
 こうした状況をうけ、登録湿地の関係自治体(都道府県や約70市町村)でもさまざまな保全、管理、計画づくりが進められています。そのひとつの具体的な動きとして、「北海道ラムサールネットワーク」が9月5日、全国にさきがけて発足しました。道内の12のラムサール条約登録湿地に関係する行政、NGO、NPOが手をつなぎ、情報交換や経験交流を通じて湿地の保全、啓発やワイズユースの推進を図ることを目的とした新たな運動組織で、「霧多布湿原トラスト」(浜中町)に事務局をおいて活動を開始しました。
 その具体的な活動の手始めに提案されたのが、ラムサール条約や湿地の保全の重要性をさらに多くの人々に普及するため、登録33湿地が統一的、戦略的に活用できるシンボルとなるような「登録湿地マーク」の採用でした。ラムサールセンターにも協力要請があり、各地の関係者から意見を聞き、環境省にもアドバイスをいただき、日本のラムサール条約登録湿地であることを明示する「マーク」の企画・立案となり、グラフィック業界の第一線で活躍するデザイナー、岡本一宣さんの協力を得て誕生したのが別掲の「マーク」です。これをベースに、ラムサール条約への国際登録番号と登録湿地名を組み合わせた第1号の基準デザイン看板が、11月12日、霧多布湿原に立てられました。
 北海道ラムサールネットワークでは、今後、この基準デザイン看板を北海道内12湿地に立て、さらにはマークを登録湿地の入口や主要な場所に掲げたり、ポスターやパンフレット類に標示する、各地の観光関連施設・物産・ブランドに標示するなどして、ラムサール条約と湿地の保全、賢明な利用の普及啓発の戦略ツールとして活用していく計画です。そして、全国33のラムサール条約登録湿地にも、この「マーク」の積極的な活用をよびかけています。


●国際ワークショップ(ベトナム)開催報告●
「海洋・沿岸湿地保全をめぐる教育ネットワークとキャパシティビルディング」

 ラムサールセンターでは、今年度から日本経団連自然保護基金の支援で「アジア湿地イニシアティブ−フェーズU」活動を開始しましたが、その第1回のアジア地域湿地ワークショップとしての国際ワークショップ「海洋・沿岸湿地保全をめぐる教育ネットワークとキャパシティビルディング」を、2006年8月30日〜9月1日、ベトナム南部のニャチャンで開催しました。
 ラムサールセンター、ベトナム政府水産省、IUCNベトナムが共催し、北海道河川防災研究センター、JICA、ベトナム政府天然資源環境省、カンフォア省人民委員会、ニャチャン湾海洋保護区公社、WWFほかが協力・後援、ベトナム国内とアジアの専門家、NGOなど100人余が参加しました。ベトナムで沿岸湿地教育をテーマにした国際ワークショップが開催されたのは初めてで、沿岸湿地の保全管理と環境教育の実際を共有し、その重要性とそれぞれの事業と現場相互のネットワーク形成の意義を認識し、今後、協力体制を構築してネットワークを継続・促進していくことを確認しました。また8月31日に、ワークショップの特別セッション「アジア湿地イニシアティブ委員会」が開催され、ラムサール条約の決議IX.19を受けて、次回アジア湿地シンポジウム(AWS)開催実現に向けての検討を開始しました。
 参加者が、AWS2005以降の各国のアジアの湿地保全をめぐって報告を行った後、磯崎博司副会長から、COP9の重要な決議についての解説と評価に関する講義があり、それらをふまえて、第4回AWSの実現にむけて、方法論、テーマ、クリアすべき課題についてディスカッションを行いました。
 討議されたアジアの優先課題としては、湿地と防災機能、湿地と人々の健康、国際湿地の問題、湿地と文化的価値、乾燥地帯の湿地、湿地と気候変動、環境教育、湿地と貧困、などのテーマがあげられました。
 また開催地候補としては、アラブ首長国連邦、カザフスタン、韓国、ベトナムなどの名前があげられました。これらについては、引き続き、委員会活動を継続するなかで検討を深めていく計画です。
 参加したRCJ会員は、B・オカラハン、A・トレンティーノ、レベッカ・D、X・ジャン、サンサニ・C.、B・バンダリ、S・ホセイン、マショー・M.、シェ・サルマー、D.P.ダス、G. J. ジュー、W.S.リー、辻井達一、安藤元一、磯崎博司、武者孝幸、中村玲子さんでした。


国際シンポジウム
●「ラムサールCOP10に向けて、アジアの湿地の課題を共有する」(韓国)報告●

 ラムサール条約COP10の開催を2008年10月に控えている韓国慶尚南道の釜谷で、アジアの湿地の課題を共有、検討するシンポジウムが開催され、韓国、日本、ドイツ、オーストラリア、マレーシア、タイ、インド、ネパール、中国などの専門家約100人が参加しました。ラムサールセンターは、ウェットランドインターナショナルなどと並んでシンポジウムに協力し、安藤元一会長、岩間徹副会長、中村玲子事務局長ほかアジア会員8人が参加しました。また、この機会をとらえ、「アジア湿地イニシアティブ委員会」の第2回会合を開催、第4回アジア湿地シンポジウム開催に向けての論議を深めることができました。


■■■ 忘年会のおしらせ ■■■
 ラムサールセンターの忘年会を、12月29日に下記のとおり行います。毎年恒例となった「暮れのお礼参り」とセットで、今年は「目黒不動尊」にお参りをしてから、会場へ。みんなで一年をふりかえり、来年の活動を展望しましょう。参加ご希望の方は、12月27日(水)までに、事務局にご連絡ください。
日 時:12月29日(金)17:30〜19:30
会 場:ととや(居酒屋)Tel: 03-3713-4126
会費:4000円程度(学生割引あります)

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