ラムサール通信
2003年4月8日発行 第80号



●「<日本・中国・韓国>子ども湿地交流イン習志野」●
無事終了

 1月19日(日)に千葉県習志野市にある谷津干潟で開催された「アジア湿地週間オープニング記念<日本・中国・韓国>子ども湿地交流イン習志野」は、習志野市や谷津南小学校、谷津干潟自然観察センターの協力を得て、成功裏に無事終了しました。
 湿地周辺に住む中国、韓国、日本の子どもたち計9人が参加し、身近にある湿地への思いやそこで見られる生き物について発表しました。3カ国語が飛び交う中、活発に意見交換が行われ、「他の国にも湿地保全について考えている友だちがいる」という喜びで話が尽きない様子でした。発表終了後は、谷津南小学校のコンピュータ室で「子ども湿地新聞」をデジタルカメラとパソコンを使って作成しました。
 イベントの様子や完成した子ども湿地新聞をラムサールセンターのホームページ(http://homepage1.nifty.com/rcj/)に掲載しています。どうぞご覧ください。
 日・中・韓3カ国の子どもたちが湿地をテーマに集うという史上初の企画は、近くて遠い3国交流の柱として来年も継続していく計画です。


●第52回<ワイズユース>ワークショップ●
「COP8報告会−湿地の多面的価値を探る」が開催されました


 1月26日(日)、渋谷・フォーラム8で第52回<ワイズユース>ワークショップ「COP8報告会−湿地の多面的価値を探る」が行われました。中村玲子さんにCOP8の全体報告を、磯崎博司先生に決議・勧告について解説していただきました。その後、COP8で焦点があてられた農業、湿地の文化的価値を、どのようにして今後のラムサールセンターの活動に盛り込んでいくかを話し合いました。同問題については今後改めて再討議の場を設ける予定です。なお資料のほしい人は事務局に連絡下さい。一部日本語訳があります。
 会員は、磯崎博司、中村玲子さんのほか、苑原俊明、土居正典、武者孝幸、小松潔、猿山弘子、岡本嶺子、中村有利子、築地珠子さんが参加しました。


●「アジア湿地週間記念 湿地ワイズユースワークショップ」●
が開催されました

 2月8日(土)に、安藤元一さん(東京農業大学助教授)の協力を得て、「湿地ワイズユースワークショップ−日本・韓国・湿地」が東京農業大学厚木キャンパスにて開催されました。韓国の釜山国立大学Gea-Jae Joo先生(RCJ会員)をお招きし、韓国の湿地と保全活動について講演していただきました。大学生を中心に16名が参加し、韓国と日本の湿地保全について活発な意見交換が行われました。1月の子ども湿地交流につづき、日韓の若ものたちの交流のテーブルを展望する好企画でした。共催してくれたフィールド・アシスタント・ネットワーク(FAN)と今後も協力を発展させていきたいと考えています。


●第54回<ワイズユース>ワークショップ・フィールド版●
「初夏の有明海 潮干狩りと六角川上り」(1泊2日)へのお誘い

 九州・有明海の奥懐、佐賀県側の広大な干潟を観察するフィールドワークショップです。大潮には28.9キロ上流まで流れがさかのぼる感潮河川である六角川ならではのユニークな企画です。有明海干潟というと諫早湾だけしか知らない人もいるのでは。長崎県から佐賀、福岡、熊本と広がる日本最大の干潟はその地域ごとに特有の生態と景観、保全と賢明な利用が行われてきました。いまも行われています。その一端を探るフィールドツアーです。諫早水門に隠れてしまいましたが六角川河口堰は、諫早の兄貴分の有明干拓の象徴的存在でもあります。佐賀県武雄市の国交省武雄河川事務所との共催です。ちょうどムツゴロウの産卵期で、周辺では間近で見ることができます。干満の潮位差が6〜7メートルに達するという雄大な有明海の干潟を満喫しましょう。どうぞふるってご参加ください。

日 時: 2003年5月17日(土)〜18日(日)
場 所: 佐賀県有明海 六角川河口干潟周辺
プログラム(予定):
5月17日(土) 午前 9時15分 福岡空港国内線到着ターミナル集合自動車で佐賀県久保田へ移動
午前11時00分  久保田着、舟で沖へ出て干潮を待って潮干狩り
午後 4時ごろ 満ち潮とともに岸辺へ 武雄温泉へ移動。 旅館「武雄温泉楼門亭」に泊
18日(日) 午前 7時30分 出発 福富町住ノ江港から舟で満潮にのって六角川上り。
午後12時半ころ 河口へもどって解散自動車で福岡空港へ。車で福岡空港へ。途中福岡湾岸干潟観察。
費 用: 参加実費は、移動レンタカー代、武雄温泉宿泊代(朝食付)、舟借上げ料などで約1万2000円を予定。その他現地まで交通費と飲食費は各自の負担となります。福岡空港(集合場所)までの移動手段・チケット等は個人で手配してください。
申し込み: 参加希望者は4月21日(月)までにラムサールセンター事務局までご連絡ください。
*舟に乗れる人数に限りがありますので、お申し込みは早めに。定員に達したら締め切ります。


ラムサール条約釧路会議10周年記念事業
●国際ワークショップ「ラムサール湿地の賢明な利用−潟湖の恵みに注目して」●
2003年7月22〜24日 釧路市

 ラムサール条約第5回締約国会議が1993年に釧路市で開かれてから10年が経ちました。それを記念して今年、釧路市はじめ道東のラムサール湿地を舞台にさまざまイベントが行われますがこのワークショップもその一つです。
 インド、タイ、バングラデシュ、台湾など海外はじめ、中海・宍道湖、霞ヶ浦、松川浦、桑名など国内の主だった潟・浦・湾などからの参加が予定されています。湿地のなかでもひときわ生物多様性・生産性の高いラグーンに焦点をあてたユニークな国際会議です。
 詳しいご案内と申し込み用紙を別紙同封します。ふるってご参加ください。


ラムサールセンター第13期総会を2003年6月1日(日)午後に開催します
予定をお繰り合わせてご参加をお願いします。詳細は次号でご案内します。


●RCJボランティアスタッフ奮闘中(インド/中国)●

 ラムサールセンターの事務局ボランティア、米澤文さん(東京学芸大学大学院生)が、昨年12月23日〜2月4日まで修士論文研究(開発途上国NGOと環境教育)のためインド・チリカ湖に行ってきました。現地のNGOパリシュリ(RCJのカウンターパートナー)の代表者ダスさんの家にホームステイし、チリカ湖で実施中の地元住民へのアウェアネス、環境教育活動を村で湖でお手伝いし、インド人もびっくりの大活躍だったそうです。
また、同じく事務局ボランティアの新井雄喜くん(早稲田大学4年生)が、中国のNGOについて勉強するため、2月28〜3月14日までWI−中国でボランティア研修をしてきました。約2週間、事務所のお手伝いをしながら、スタッフの案内で北京近郊の名所や自然保護区、大学などを見学しました。日本の学生が初めてWI−中国に訪れたことに、代表者チェン・ケリン氏は「若者育成のために今後もこのようなボランティア研修を続けていきたい」と喜んでいました。


●中村玲子さんのコラムが始まりました●

森林文化協会のホームページに月1回、中村玲子さんのコラム掲載が始まりました。森林文化com.>緑の最新情報>グリーン時評です。ぜひご覧下さい。
URLはhttp://www.shinrinbunka.com/です。


<2003年1〜3月の主な活動>


12月27〜30日 パリシュリ・トレーニングキャンプ 滋賀大学の遠藤修一先生が講師として参加(インド・チリカ/武者孝幸、米澤文、新井雄喜)
1月 6〜10日 湿地環境教育ワークショップ参加/IGES、RCJ共催(タイ・バンコク/岩間徹、中村玲子、米澤文、新井雄喜)
   18日(土) <日本・中国・韓国>子ども湿地交流 バスツアー「習志野市を知る日」
   19日(日) <日本・中国・韓国>子ども湿地交流イン習志野開催
   26日(日) 第52回<ワイズユース>ワークショップ開催(東京)
 27〜2月4日 アジア湿地ウィークイベント参加(インド・チリカ/辻井達一、平井朗、中村玲子、米澤文)
2月 4日(火) スポンサーの積水化学工業へ活動報告(大阪/武者孝幸、築地珠子)
   6日(木) 湿地修復フォーラム参加/釧路国際ウェットランドセンター主催(釧路/Gea-Jae Joo、Bishnu Bhandari、中村玲子)
   8日(土) アジア湿地週間記念 湿地ワイズユースワークショップ開催(神奈川)
3月 6日(木) 公開フォーラム 環境コミュニケーション参加/JICA主催(東京/中村玲子、武者孝幸、米澤文)
  17日(月) 日本経団連自然保護協議会10周年記念シンポジウム参加(東京/中村玲子、武者孝幸、米澤文、築地珠子)
  19〜20日 世界水フォーラム参加(京都、滋賀、大阪/中村玲子)



<特別寄稿>


 大東文化大学の苑原俊明教授(RCJ会員)が同大学の学内新聞「大東文化」(2003年3月15日発行)にて、ラムサール条約の役割とCOP8について解説しています。

ラムサール条約の役割− 苑原 俊明(法律学科教授)

日本の風景に共通
 雪の湿原に舞うタンチョウ。冬の水田にて落穂をついばむ鶴たち。カラフルなサンゴ礁の周りを泳ぎ回る一群の魚。潮干狩りの人々でにぎわう干潟の海。岸にヨシが生い茂る湖で、湖面を漂う白鳥。さて、これら日本の風景に共通するものは何か。答えは、湿地。
 湿原、サンゴ礁の近海、干潟、湖沼のいずれもが、水と陸地との出会う場所であり、そこでは、人間を含めた様々な生命が生まれ、育まれる場所(生態系)である。
 その語感からすると、湿地には、じめじめしたいやな場所、不毛の土地というイメージが伴う。ところが実際には湿地のおかげで、海が浄化され、河川の水量が調節され、渡り鳥その他の生き物が生きていくことができる。また、人間も湿地の産物を利用し、それを基礎にその社会の文化や景観を作り上げてきた。その意味で、湿地は森とならび地球の生命を支える場所だ。

1971年に締結
 こうした世界の湿地を破壊から保護するために、1971年イランのラムサールにて締結されたのが、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)」である(昨年の時点で締結国は133か国。日本は1980年に加入)。
 昨年11月に、スペイン、バレンシアにて条約の締結国による会議が開かれた。
 条約の対象である湿地とは、自然のもの、人工のもののいずれであっても、また水が淡水が、塩分を含むものかに関係なく、「沼沢地、湿原、泥炭地」ならびに干潮時に水深6メートルまでの干潟、浅海域および河川などの水域をさすとされる。
 各国は国内にあるこうした湿地のうち特に国際的に重要な(かつては「特に水鳥」にとって、とされたが現在はそれに限定されない)ものにつき、条約を締結する際に最低限1か所を指定し、条約事務局保管の登録リストへ登録することが義務付けられている。
 (日本は、条約加入時に釧路湿原を登録した)この登録地は、条約により国際的な保護の対象になる。また締結国は、新規に登録地を追加できる他、既存の登録地で生態系の変化で危なくなったものについて特に適切な措置を取る必要がある。
 この条約では、湿地に人間が立ち入って生活することを禁止していない。むしろ登録地を含め国内にある湿地に対して、締約国はその「賢明な利用」(ワイズ・ユース)を促進することが求められている。こうした基本原則のなかで、実際に各国が採っている湿地の管理の実態を調べ、必要なら新たな措置をとるための原則づくりについて審議するのが、条約締約国会議なのだ。

バレンシア会議
 今回は第8回目の会議で、政府代表や環境保護団体など非政府組織(NGO)の代表、約1200人が参加した。会議は「水と生命と文化」をメーン・テーマとして、分科会や本会議で議論したあと、46本の決議を採択して終わった。今回の会議の特徴は、農業や湿地の「文化的な価値」について新たに議論を深めた点である。また日本と関連して、次のことが特記される。ひとつは、北海道の宮島沼の他に、産業廃棄物処理場埋め立て問題で揺れた名古屋の藤前干潟が、新たに登録地として承認されたこと。(これで現在、日本の登録地は13か所)一方で、日本に事務局を置き、アジアでの湿地保護に関する普及・啓発活動に従事している日本のNGO、ラムサールセンターが一昨年に主催した国際シンポジウムの成果を発表し、参加者の注目を集めたこと。
 ダム建設、河川などいわゆる自然復元事業、干潟の埋め立て、海外での開発援助がらみでの「開発」事業などなど、日本の内外で依然として湿地の保護にかかわる問題が出ている。それゆえ、ラムサール条約の仕組みを知り、理解し、日常の生活に生かしつつ、地球全体での湿地にかかわる問題に取り組むことが重要なのだ。


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