ラムサール通信
2014年3月5日発行 第163号



今年のラムサールセンター(RCJ)は、年明けてすぐ、「ESDのためのKODOMOラムサール」活動が、1月10〜12日(タイ)、18〜19日(鹿児島)と、2週連続しました。つづいて環境省の「荒尾干潟ワイズユース検討会」(2月4日)、地球環境基金の来年度の助成要望申請(2月12日)、同じく地球環境基金今年度の支払申請(2月21日)と忙しい日々がつづきました。


●「ESD-KODOMOラムサール国際評価ワークショップ」の開催お知らせ● 
(「ESDのためのKODOMOラムサール」拡大・公開実行委員会)

 RCJは、2011年度からの3年計画事業として、「ESDのためのKODOMOラムサール」事業(地球環境基金助成)を実施してきました。持続可能な社会づくりをめざす人材育成のための環境教育と、その成果を確実にするネットワーク形成をうながす活動です。ラムサール条約が求めるCEPA(Communication, Education, Participation and Awareness)の一環として、日本とアジアの登録湿地をフィールドとして活動する子どもたちの湿地交流を推進してきました。3年間で、計14回の「ESD-KODOMOラムサール」湿地交流を実施し、延べ1300人以上の子どもたちが参加しました。
その3年間の活動のまとめとして、内外のステークホルダーによる成果と課題の整理、評価、分析をおこなう国際評価ワークショップを開催します。あわせて、このプロジェクトが目標としてきた「ESDユネスコ世界会議」(2014年11月、岡山県、愛知県で開催)への具体的な貢献に向けて、次年度以降の行動方針を検討します。なおこのワークショップは、「ESDのためのKODOMOラムサール」拡大・公開実行委員会として開催し、土木学会環境システム委員会と共催します。



ESD-KODOMOラムサール国際評価ワークショップ
日時:2014年3月22日(土)午前10時〜午後5時30分
会場:桜美林大学プラネット淵野辺キャンパス(PFC)201教室
(神奈川県相模原市中央区淵野辺4-16-1) ※JR横浜線「淵野辺」駅駅前
主催:ラムサールセンター(RCJ)、ESDのためのKODOMOラムサール実行委員会
共催:土木学会環境システム委員会(第18回環境システムワークショップと位置づける)
講師:川嶋宗継(チェンマイ大学)、サンサニー・チョーウ(マヒドン大学)、チチョン・パララ
クシ(チェンマイ大学)、中村大輔(滋賀県草津市)、藤倉まなみ(桜美林大学)、名執芳博
(長尾自然環境保全財団)、岡野香子(宮島沼・水鳥湿地センター)ほかのみなさんです。
※ もっと詳しいお知らせは以下をどうぞ。
http://homepage3.nifty.com/kodomo-ramsar/KODOMO_EW_inform_jp.pdf
※ 終了後は懇親会を予定しています。


●ESDのためのKODOMOラムサール国際湿地交流●
<チャオプラヤ川下流域>報告

「ESDのためのKODOMOラムサール国際湿地交流<チャオプラヤ下流域>」は、タイの母なる川、チャオプラヤ川の流域を舞台に、2012年のチェンマイ、2013年のナコンサワンと、上流から下流へと活動を展開し、その3年間のまとめとして、2014年1月10日〜12日、タイのバンコク周辺で開催されました。
 当初計画ではバンコク市内の国連ビルでおこなう予定だった開会式は、デモ行進などの影響で、メイン会場のマヒドン大学サラヤキャンパスでの実施となりましたが、国連ESCAP、UNESCO、UNEPはじめ、タイの天然資源環境省、JICAなど、このイベントの共催団体代表が出席、基調講演をおこない、ラムサール条約事務局長からビデオメッセージが届くなど、日本・タイ子ども湿地交流のまとめにふさわしい国際色豊かなプログラムとなりました。
日本から参加した子ども代表は、宮島沼(3人)、蕪栗沼・周辺水田(2人)、琵琶湖(8人)、藤前干潟(6人)の計19人、タイからは、Chiang Mai(3人)、Chiang Rai(3人)、Lamphun(3人)、Nakhon Sawan(3人)、Sam Roi Yot(2人)、Don Hoi Lot(2人)、Kut Ting, Bung Kan(2人)、Nong Bong Kai Non-Hunting Area(2人)、Krabi Estuary(2人)の22人が参加し、講師、引率、スタッフなどの大人をあわせて13湿地からおよそ100人が参加した大きなイベントとなりました。東京都市大、滋賀大、東海大の学生さんが、RCJボランティアとして協力しました。日本語とタイ語のできる4人の女性通訳ボランティアチームも、大活躍しました。
 チャオプラヤ川河口に広がるマングローブ林や泥干潟は、渡り鳥の重要な休憩地として、魚介類のゆりかごとして、バンコクの人々の暮らしにいまも重要な役割を担っています。今回は、その河口に広がる豊かな生態系と、人々の生活をテーマに、「チャオプラヤ下流域の宝探し」をして、国際協力・交流を深めました。
 フィールド学習では、コックカーン(Khok Kham)沿岸湿地で6年前からおこなわれているマングローブ林再生の現場や、周囲の塩田の見学、またラムサール条約湿地のドンホイロー(Don Hoi Lot)ではボートで水路をさかのぼり、河口干潟の様子と自然、そこで生活する人たちの暮らしを体験しました。
ディスカッションでは、中村大輔先生のファシリテートのもと、タイの子どもグループと日本の子どもグループにわかれてディスカッションし、最後には、タイと日本それぞれの視点からつくったお宝ポスターをつくりました。
 日本の子どもたちのポスターに選ばれた6つ宝は、「マングローブ、自然を大切にする地元の人々、湿地の生きもの、過去のあやまちから学ぶこと、洪水のめぐみ、エコツーリズム」で、メッセージは「竹で守られる生命のマングローブ〜歴史に負けない人々の自然を思う心〜」となりました。 
タイの子どもたちのポスターでは、「水、マングローブ、地元の人の良い心、生きもの、竹の壁、地元の人の生き方」が宝に選ばれ、メッセージは「友情を築き昔ながらの知恵を生かす」となりました。
タイと日本では、選んだ宝に違いもあったが、「マングローブ」「地元の人」などの共通点もあり、国や文化が違っても、「自然を大事に思う心は同じ」と、子どもたちは大きな発見をしたようでした。
                     


●ESDのためのKODOMOラムサール<出水平野>報告●
「田舎でも ツルとの仲は いいなかだ」

2014年1月18日(土)〜19日(日)、鹿児島県出水市の出水平野で「ESDのためのKODOMOラムサール〈出水平野〉」が出水市、出水市教育委員会、生きものと人・共生の里を考えるシンポジウム実行委員会との共催、国連環境計画アジア太平洋地域事務所(UNEP/ROAP)、ラムサール条約登録湿地関係市町村会議、積水化学工業、フィールドアシスタントネットワーク、NEC学生バードソンなどの協力、環境省の後援、地球環境基金の助成で開催されました。
 出水平野は毎年1万羽以上のナベヅルが飛来する日本最大のツルの越冬地。新潟県佐渡市、兵庫県豊岡市、山口県周南市、鹿児島県出水市が年に1回集まって話し合う「生きものと人・共生の里を考えるシンポジウム」の協賛イベントとして開催され、4市に加え、蕪栗沼・周辺水田、化女沼、藤前干潟、漫湖のラムサール条約湿地から、計36人の子どもたちが参加しました。大型の野鳥と人々の暮らしの調和をメインテーマに、子どもたち自身が、ツルと共生する出水平野の価値を学び、子どもたちでできることを話し合いました。RCJボランティアとして東京都市大、桜美林大、福岡女子大、高松大の学生さんほかが協力しました。
 野外学習では、荒崎干拓のツル観察センターで、出水市の小学生、中学生で構成されるツルガイド博士による解説や、地元荘中学校の生徒の指導のもとに早朝のツルの飛び立ちカウントに参加しました。朝焼けの空に1万羽を越すツルたちが次々に飛び立っていく光景に、子どもも大人も息を飲んで見入っていました。
出水平野の宝を決めるディスカッションでは、2時間におよぶディスカッションの末、「ツルを大切にする心、ツル、ツルクラブ、ツル保護監視員、出水の豊かな自然環境、ボランティアガイド」という6つの宝が決まりました。ポスターのメッセージは、「田舎でも ツルとの仲は いいなかだ 〜出水にはあふれる水と愛がある〜」に決まりました。
閉会式では、出水平野の宝物ポスターを出水市長に贈呈し、環境省野生生物課課長の中島慶二さんから講評をいただいて終了しました。


●第92回ワイズユース・ワークショップ開催報告●
「ミャンマーの湿地保全とラムサール条約」

 2013年11月23日(土)に上智大学四ッ谷キャンパスで第92回のRCJワイズユース・ワークショップを開催しました。ネパールのビシュヌ・バンダリさん、フィリピンのアマド・トレンティーノさん、上智大学大学院生の鈴木詩衣菜さん、RCJ事務局長の中村玲子さんが2013年10月に実施した、ミャンマーの湿地調査(KNCF助成)の中間報告を中心に、10月中旬にインド・チリカ湖を襲ったサイクロン「ファイリン」の被災状況の報告(パリシュリの「リスクマネジメント」プロジェクトなどの成果で、犠牲者を最小限に抑えることができた)、その他会員からの近況・活動報告などをおこないました。
会員のビシュヌ・バンダリ、中村玲子、武者孝幸、磯崎博司、苑原俊明、土居正典、亀山保、中村秀次、大村弥加など12人が参加しました。


●中国「湿地の学校10年」参加報告●

2013年12月7〜9日、中国・無錫市で開かれた、「湿地の学校10年」の催しに、中村玲子さん、武者孝幸さん、長倉恵美子さんが参加しました。中国の「湿地の学校」は、2003年、RCJが初めて実施した「日・中・韓子ども湿地交流(谷津干潟)」がきっかけで、NGOのウェットランド・インターナショナル中国(WI中国)のよびかけで生まれた、湿地環境教育に熱心な中国の学校のネットワークです。当初はWI中国がリーダーシップをとっていましたが、いまでは独立した協議会が誕生し、参加校は15校を超え、年1回の総会や研修がおこなわれています。今回の10年記念会合には、中国国内各地から30人以上が参加し、目標は100校のネットワークにすること、など活発な議論が展開されました。地球環境基金の助成で、共通の教材づくりが進んでいます。
 無錫市は中国の誇る淡水湖「太湖」のほとりの都市で、RCJが2年前にアジア湿地シンポジウム(AWS)を開催したところです。AWS後、「ウェットランド無錫」というNGOが誕生し、「湿地の学校」も2つ、生まれていました。
中国は一人当たりの淡水の量が少なく、水に関する教育(水育といわれます)が必須の国です。そうした国で、RCJ活動が1つのきっかけとなって湿地保全活動が広がっているのを知って、頼もしく思いました。 





RCJ会員・事務局の近況・現況・ホットニュース

◆ 「NEC学生バードソン2013」から「ESD-KODOMOラムサール」活動に対し、80万円の寄付をいただきました。昨年度に引き続きのご支援です。たいへんありがとうございました。
◆ 長倉恵美子さん(会員)が、日本国際湿地保全連合(WI-J)の事務局スタッフになりました。RCJとは、環境再生保全機構で地球環境基金担当だったときからのおつきあいですが、これからは「湿地」仲間で、ますますお世話になることがふえそうです。
◆ 事務局ボランティアスタッフの尾崎友紀さん(東京都市大4年)が、青年海外協力隊の選考に受かり、環境教育のボランティアとしてペルーに赴任することになりました。現役のRCJボランティアスタッフとしては初の快挙。これからさまざまな研修を経て、現地に行くのは10月ごろの予定です。
◆ ナベヅル越冬地の山口県周南市八代で、長い間「野鶴監視員」として貢献し、昨年夏に亡くなった弘中数実さん(会員)の遺稿集出版の計画があり、中村玲子さん(RCJ事務局長)が、資金集め、企画・編集に協力して、賛同者を募っています。詳しい案内を同封します。
◆ 滋賀大学を退官後、チェンマイ大学の客員教授として現地で3年間、タイの学生を直接指導していた川嶋宗継さん(会員)が、帰国しました。今後もチェンマイ大への協力はつづけつつ、日本(兵庫県)に軸足を移し、環境教育の推進に貢献したいとのこと。DESDの最終年に、心強いご帰国です。
◆ 地球環境基金に「国連DESDとESDユネスコ世界会議への貢献をめざす『ESDのためのKODOMOラムサール<琵琶湖・総集編>』」活動で700万円の助成要望申請しました。結果は4月下旬ごろ出る予定です。
◆ 2009年「KODOMOバイオダイバシティ<串本沿岸海域>」に参加した佐藤琢磨くん(当時中1)から、5年ぶりに連絡がありました。いまは高校2年生。今年8月に予定されている琵琶湖での「KODOMOラムサール」にも協力してもらえそうです。



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